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LOSER 犯罪心理学者の不埒な執着

鏡コノエ/著
 石原 理/イラスト 定価:本体690円(税別)

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STORY

LOSER 犯罪心理学者の不埒な執着定価:本体690円(税別)

もう、お前を絶対に逃がさない──

類い稀な美貌と圧倒的なカリスマ性で、絶大な人気を集める犯罪心理学者・林田(はやしだ)は、三年前に突然行方不明になった恋人・志水(しすい)と再会する。記憶を失い、ボロ雑巾のようになっていた志水は、頑なに林田を拒絶するが、厄介な事件に巻き込まれていた。志水への想いと仕事柄、否応なしに事件に関わることになった林田。だが志水がとある能力を持っている事実に気がつき──!? ミステリアス・ラブロマンス登場!

著者からみなさまへ

はじめまして鏡(かがみ)コノエです。初の文庫になります。物語の主人公は、容姿も頭脳も優秀ゆえにやたら自信家な犯罪心理学者、林田穂純(ほずみ)と、記憶喪失なうえに何かと問題アリな志水一之(かずゆき)の二人。林田は志水に一途ですがセックスアピールが強かったり、志水は不思議な能力を持っていたり。そんな彼らが事件を通じて不器用ながらも心を通わせていきます。石原(いしはら)先生の描いてくださった麗しい二人とともに、長く愛されていきますように! 宜しくお願いします。

初版限定特典

LOSER 犯罪心理学者の不埒な執着

初版限定書き下ろしSS

「林田穂純の悪癖」より

 肩胛骨から腰へ、指の愛撫が落ちていく。
 吐息が首筋を撫でて、鎖骨から胸へ、腹をくすぐっていくと、臍の辺りで動きを止めた。

……続きは初版限定特典で☆

special story

書き下ろしSS

『LOSER 犯罪心理学者の不埒な執着』番外編
「熱い夜の悪戯」
鏡コノエ

「あっちぃな……クソッ」
 頬を伝う汗を手の甲で拭いながら、季節外れの暑い夜に林田穂純(はやしだほずみ)がぼやいた。
「それ、今夜だけで三回も言ってる」
 腕の中で志水一之(しすいかずゆき)はくすりと笑って、汗に湿った顎を撫でてきた。
「言いたくもなるだろうが」

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 林田は汗が止まらずイライラしているのに、志水ときたら一滴の汗も見えない。顎のラインをなぞったその指先も、本当にセックスの最中か? と疑うほどにひやりとして心地いいが、その反面林田一人だけが火照っていることに、少しムカついていた。
「おい」
「エアコンが故障しているなら、先に言え」
 夜がふければ少しは涼しくなるかと期待したが、窓を全開にしていても向かいのビルが邪魔するらしく、ちっとも風が入ってこない。
「使っていないものを私が知っているわけがない。言っておくが、ここの家主は私じゃないぞ? 私だったらもう少しましな部屋にしているさ」
「あいつは今どうしてる」
 ふと思ったことを口にした途端、志水の大きな瞳が、すぅっと細められた。
「──へえ。こんなときに、それを訊くのかい? ここに私がいるのに?」
「ぉおっと……」
 うっかり口を滑らせて機嫌を損ねてしまったようだ。しかし気づいた時には手遅れで、好戦的な笑みが林田を捕らえていた。
「怖い顔してんぞ、一之」
「私以外の誰かの話をするからだよ。私たちが今なにをしているか忘れてしまったのかな?」
「……っ、……おい……っ」
 汗の滲む胸板を指先でなぞりながら、繋がった部分を締め付けられて、腰にぞくっと甘美な快感が走った。
「は……っ」
 むずがゆい刺激に林田が小さく息を飲んだ途端、眼下で志水が気怠い吐息を洩らしている。林田が感じた拍子に志水の中を犯す杭が角度を変えたようだ。彼のうっとりとした笑みに林田はぞくぞくした。
「じゃれるな、一之」
「別のことを考えた穂純が悪いんだよ」
「俺をやり込めたつもりが、自分に返ったな」
「でも、何をしていたかは思い出しただろう? 私のおかげだ」
「ああ。お前のイイ顔を見て思い出したよ。この格好もな」
 一之は林田の下で胸に突くほど深く膝を折りながら、大きく股を広げた体勢で林田を深々と受け入れていた。林田の汗が落ちるたび、志水の白い肌の上で砕ける。中から、そして上からもマーキングしているようだ。
「いつまでも見ているだけじゃ、私が飽きる」
「浸ってんだよ。お前は俺のものだな──ってさ」
「浸るだけかい?」
「まさか」
「それは結構。今度他の誰かの話をしたら、ここを噛んでやるから」
 しかし志水がその気になればなったで、林田にとっても最高の状況だ。エロティックな志水は林田の好物なのだ。煽られて、そそられて、たまらなくなる。
「お前に噛まれたって興奮するだけだ」
 胸をなぞる指先が下腹をくすぐり、繋がりあったそのあたりを意味深になぞってきた。まったく、どちらが抱いているのかわからない。志水の挑発に乗った林田は、艶やかで自信に満ちた色気に魅了されながら、笑みを浮かべる唇を貪った。
「ん……ふ……ん、んんぅ……」
 悪戯のお返しとばかりに上唇を繰り返し甘噛みすると、こそばゆさと微かな痛みに志水が呻いた。志水が感じれば、根元深くまで入れた林田自身を心地よく締め付けてくる。
 林田まで我慢できずに呻くと、志水は喉の奥でくつくつと笑っていた。
 リードするつもりが、なかなか主導権を渡してくれない。小憎らしさと同時に、林田は一層煽られて、緩やかな律動をはじめる。
「ふっん……んっ、んっ……ン……ンぁ、は、は……あ……っンんん……んーっ」
 林田が腰を動かすなり鼻にかかった声がはじまって、耳に心地よかった。しかし少し強くした途端に志水が首筋を反らして喘ぐとキスが中断されてしまった。
 逃げるな、と再び唇を貪ると、息苦しそうに志水が背中を引っ掻く。
「いてぇよ」
「意地悪したのは穂純だ」
「仕掛けたのは、お前だろ。俺を挑発するからだ」
「私の挑発に乗るなら、もっと気持ちいいことにしてくれ。意地悪は嫌いだ」
「悪戯好きのくせに」
「穂純に悪戯をするのは、私の特権だからね」
「だからって俺も従順な訳じゃねーぞ。知ってるだろ?」
「ンぁっ……っ、……あっ……!」
 言い返される前に奥のイイ所を強めに突いてやると、志水は掠れた声を弾ませて、薄い背中を仰け反らせた。
「性格の悪さはお互い様だ。ああ、いや、お前は悪いわけじゃない。エロいんだったな」
「あっ! あっ、ずるい……っ、……私の……! あっ、あぅンっ、……穂純っ」
「おっと……っ」
 不意打ちでイイ所を突かれたせいで、志水の中が淫らにうねった。
 同時に息苦しいほどの締め付けがきて、危うくイキそうになってしまったではないか。躰深くから込み上げてくる情動に耐えて、林田は歯を食いしばった。
「おい……そう怒るなって。気づいてるか? お前が怒ると、締め付けがよくなるってこと……。今イキそうになったぞ」
 身震いが収まり、林田は安堵の息を吐いた。ただでさえ暑いのに、熱いことをしているせいで余計に汗が出る。射精を堪えたせいで、顎の先から汗の粒が滴った。落ちた汗が志水の唇について、薄い舌がねろりと舐める。
 まったく……なんてやらしさだ。
「だったら素直にイけばいいのに。私より先にイクのが悔しいのかい? 無駄なプライドだと思うけど」
 細い腰がくねって、遠のいたばかりの絶頂感がまた近づいてきた。凶悪な衝動にくらくらして絶頂の誘惑に飲み込まれそうだが、ギリギリのところで耐える。
「くそっ……うるせーよ。こんなときくらいだろ? 俺がお前を振り回せんのは」
「私だって、十分穂純に振り回されているさ。こんな大きなものを受け入れるくらいには、ね?」
「ね……じゃねぇよ……ああ、くそっ、動くな」
 濡れに濡れまくった襞が、にち、と音を立てて、林田の根元を締めてきた。それだけで腰が痺れてしまうくらいの快感が背筋を抜けていくと、一体どっちが抱かれているのかわからないような状況だ。
「あー、頭にきた。絶対にお前を先にイかせるからな」
「ふふ……だったら私も穂純が先にイクところが見たいな」
 その余裕もすぐになくしてやる。
 季節外れの熱帯夜で二人とも頭が茹だってしまったのか、下らない遊びに火が点いてしまったようだ。早速とばかりに、林田は志水の細腰を掴んで抉るように腰を動かしてやった。途端に腕の中の恋人が細い躰をくねらせながら、淫らに喘ぎだした。
「んんっ、んっんぁあ、あ! あ! あー……ああ……っ」
 本能に従順な声が耳にクる。自然と腰の動きが激しくなっていくと、繋がり合ったそこから、ぐちゅぐちゅと滑った水音が聞こえはじめた。
 生々しく色香を放つ痴態に、生々しい音だ。志水は目からも耳からも挑発してくれる。しかも大人しく喘ぐだけじゃなく、熱い瞳で林田を一心に見つめてきた。
「は……んぅ、……ふ……っ……先にイクのが嫌で……ぁ、ん……ん、……手加減してるだろう……」
「──っるせ」
「ほら、……図星だ」
 小生意気すぎて、だから先にイかせたくなるのだ。
 林田は小さく舌打ちして、上体を大きく倒した。腿を掴みながら、激しいピストンを繰り返すたび志水が切なげに身悶える。
「あ! あ! あっ、ヤッ、待っ……強いっ、穂純! あ! あっ! アッ!」
「お前が……煽っただろうが」
「だって……ああっ、あ! だめっ、あーっ、クる……ッ、ぃく! イクッ 穂純ッ」

『煩いわよ、アンタたち!』

 窓の外から聞こえた聖子(せいこ)の声に、ぎくっとなった。
「……今の、あいつか?」
 聞き間違いじゃなかったら、下の喫茶店の店主、聖子の怒声だ。
「窓……全開だったのを忘れていたね」
 達する直前で邪魔をされて、志水が荒い吐息で外を見る。そういえばそうだった。恋人とのセックスに夢中で周りが見えていなかったらしい。
「窓閉めるか」
「駄目。ここで止めるなんて、愚行もいいところだ」
 躰を起こしかけた林田を志水が止めて、自ら腰を揺さ振ってきた。
「俺はいいが……お前は声、我慢できるのか?」
「どうして私が、彼女に気を使わなければならないんだ?」
「それは……おっと……こらっ」
「ほら……ここがイイの、知っているだろう? ん、ん、んん……ふあっ、あっあっ」
「声、気をつけろ」
「そんなこと言われたって、穂純のこれがごりごりと擦るから声が出てしまうんだろう? ほら、また……ああっあ、んんっ! ん! あっ、ぃい……っ、いい……っ」
「だから、おい。ったく、後で叱られんのは俺なんだからな」
 志水はそうと知っていてわざと声を大きくしているのだろうか。
 たまりかねた林田が志水の口を押さえると、もがっと音を立てた拍子に今夜一番の締め付けがきた。
「ぅおっ……っっ」
 不意打ちのようにキた絶頂感に林田が息を飲んだ。
 クソッ、出ちまうっ。焦って目を見開いた林田の下で、勝利を確信したような、クソ小生意気でエロい笑みが見上げていた。
「あああ……っあああーいいよ、いい……っ」
 本心から快楽を楽しむ喘ぎを洩らしながら。

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