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ホワイトハート X文庫 | 今月のおすすめ

妖艶な大正浪漫が花開く!「帝都万華鏡」シリーズ 帝都万華鏡リード 帝都万華鏡 たゆたう光の涯(はて)に 鳩かなこ/著 今市子/イラスト 定価:本体580円(税別)
あらためて 4人の主人公たち
高市京介(たかいち・きょうすけ)
編集者として多忙な日々を送りながらも、長年の想い人である琢馬を公私ともに支える。日本橋の繊維問屋に育った五男坊。一見無愛想に見えるが、実は情に篤い美貌の持ち主。家柄・英知ともに兼ね備えているが、どこか報われない忍耐の人。
石木琢馬(いしき・たくま)
京介によって、その才能を引き出された新鋭の詩人。一高時代は首席を通すも、家の事情から帝大進学を断念した苦労人。肺の病をわずらっている幼馴染みのせつこを妻とすることに。華奢で天然で、少年ぽさがいつまでも抜けない善人。
石川琢馬 高市京介
岡野紘彦 横山春洋
横山春洋(よこやま・はるみ)
吉原遊廓に生まれ育った次男坊。京介・琢馬とは一高時代からの級友だが、自身は一高を辞め単身京都へ。日本画家となる。梔子の香りに似た体臭が、妙な色気となって男を惑わせる。毒舌だが、実は情にもろく傷つきやすい心を隠し持つ。
岡野紘彦(おかの・ひろひこ)
羽振りのよい材木問屋の次男坊。初めて訪れた遊廓の座敷で、春洋と出会う。年下でありながらも、春洋を想う気持ちはひとしお。純情、天真爛漫で根っからのお坊ちゃまだが、意外な一面も。第3巻では、汗の似合う江戸っ子に成長する。
琢馬と京介の物語
第1巻 『帝都万華鏡 桜の頃を過ぎても』
帝都万華鏡 桜の頃を過ぎても  舞台は大正に元号が変わった頃の帝都。給付生として一高に入学した石木琢馬は、桜の下で出逢った美しい青年・高市京介に、かつてない感情を抱いていた。自作の詩をしたためた雑記帳を教室に忘れてきた琢馬は、あわてて教室に駆け戻る。そこで雑記帳を読んでいたのは、あの京介だった。やがて詩人と編集者となる二人の関係は親友のままなのか。京介の狂おしいまでの想いは、封印されたまま永遠に続くはずだった。しかし……。
こんなに傍にいるのに、あの日が遠くなる。見えなくなる。救いようのない愚かさに京介は微笑んでいた。
第4巻 『帝都万華鏡 たゆたう光の涯に』
帝都万華鏡 たゆたう光の涯に  三十路に入り、編集者として多忙な日々を送る高市京介と、詩人としての地位を得つつある石木琢馬。しかし琢馬は、まだ誰にも告げられぬ事実を胸に秘めていた。そんな不安を抱える琢馬の前に突然現れた京介の後輩、美作重三郎。美作の挑むような視線に琢馬は心惑わされる。そして、予想だにしない出来事が彼らを襲う……。
胸苦しい愛おしさは、どこか寂寥に似ていた。京介が傍にいるという喜び。胸を満たす切なさをどう表現することもできずに、琢馬は京介の黒い髪に指を絡ませた。

春洋と紘彦の物語
第2巻 『帝都万華鏡 梔子香る夜を束ねて』
帝都万華鏡 梔子香る夜を束ねて  女たちがひしめき合う吉原遊廓で生まれ育った横山春洋は、帝都の一高を辞め、京都で絵画を学ぶ身となっていた。久しぶりの実家で座敷にあがった春洋は、馴染み客の息子・岡野紘彦と出逢う。紘彦からのまっすぐで無垢な求愛に、心惑わされる春洋。やがてただならぬ関係になるが、ある誤解からふたりの心はすれちがってしまうことに。
春の夜の夢。檻のなかでしか見られない夢。夢、なのかもしれぬ。喘ぐように息が喉の奥に絡まる。名前を呼ぼうとして、それなのに春洋はただうめいただけだった。
第3巻 『帝都万華鏡 巡りくる夏の汀に』
帝都万華鏡 巡りくる夏の汀に  横山春洋は日本画の画匠に、岡野紘彦は帝大生として家業を手伝う身となる。前作『梔子香る夜を束ねて』でのすれ違いを克服したふたりは、離れていた時間を惜しむように逢瀬を重ねる。しかし、紘彦にとって春洋はまだなお遠い人。早く一人前になりたいと願うも、それを試すかのように再びふたりを引き裂く出来事が……。
体を重ねて、心音を束ねても、どこか遠い人だった。 (中略)祈るように紘彦は濡れた肌に口付けた。こんな恋は一度きりだ。こんな人には二度と出会えない。