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ホワイトハート X文庫 | 受賞記念インタビュー2015
ホワイトハート新人賞2015年下期 受賞記念インタビューたくさんの応募作の中から『憧憬の翼 透明の枠』で佳作に選ばれた西崎(にしざき)いつきさん。男子高校生たちの心情を丁寧に描いた点に評価が集まりました 佳作受賞おめでとうございます!ありがとうございます。本当に恐縮です。 編集部から受賞の連絡を受けたときは、どんなお気持ちでしたか?良く分りませんでした(笑)。パソコンを立ち上げたときだったのですが、淡々とお声を聞いていたように思います。緊張していたのかもしれません。 思春期の悩み真っ只中の高校生・慶吾と、慶吾が憧れる陸上部の韮崎。「憧れる気持ち」を照れずに書ききってくださり、読みごたえがありました。この登場人物を書くにあたってのご苦労や喜びがあれば、教えてください。もともと青春群像劇のようなものが好きで、人物の心模様が交錯して、ストーリーとキャラクターがともに成長していく過程を描きたいと思いました。主人公の慶吾については、ただ真っ直ぐであることを意識して書きましたが、それが最も難しかったように思います。慶吾にしろ、韮崎にしろ、人は誰でも悩みや後ろ暗さを二つ三つ抱えているもので、そういった「言いたくない何か」や「言えない何か」を抱えて試行錯誤する若さそのものが題材でもありました。私の力量が不足していたように思いますが、真っ直ぐであるからこそぶつかる壁や捻くれてしまう感情など、高校生独特の不安定さや不器用さを一つのキャラクターとして表現しようと思いました。 西崎さんが書く男子高校生は、とても生き生きしていて、「もっと読みたい!」と思わされます。題材としての「高校生男子」に、書き手としての特別な思い入れなどがおありなのでしょうか?私は、高校生という、ちょうど子供と大人の狭間で、良くも悪くも成長していく少年の精神や肉体に、もっとも強いエネルギーが宿っていると思っています。それは向上していこうとする精神的な力でもあり、緩やかに成熟していく肉体的な美しさでもあると思っています。そういう意味で「男子高校生」は発展途上の未成熟な題材で、書く上で私はとても惹かれます。 好きな小説、漫画、映画などを教えてください。高校生モノではないですが、映画『スタンドバイミー』は発展途上の少年像を描くという意味においては、私の創作の根底にある気がします。しかし、基本的に雑食なのでBLもNLもライトノベルも文芸書もミステリーもSFもなんでも好みます。淡々としつつずっしりとした重さのある作品に強い感銘を受けます。王道ですが、小野不由美先生の「十二国記」シリーズは擦り切れるほど読み込みましたし、宮部みゆき先生の作品や、高村 薫先生の作品も多く読ませてもらっています。人物の描写もさることながら時代背景や溢れ出る人間の質感とリアリティにいつも感嘆します。BLに関してもなんでも読むのですが、榎田尤利先生のお話や英田サキ先生のお話は個人的にツボで、ぐっとくることが多いです。漫画は本当にどんな作品でも読みます。 これからどんな作品を書いてみたいですか?書かせていただけるのであれば、なんでも書きたいです。「高校生」も確かに好きな題材には違いないですが、大人同士の駆け引きとか探り合いのような恋愛も書いていて面白いだろうなと思います。異世界や近未来も題材として面白いと思いますし、いずれは時代物にも挑戦してみたいです。ただ、やはり一番は読者の皆様の心に何かしら引っ掛かりのようなものを残せるお話を書きたいな、というところですね。おこがましいですが。そのためにはまずは私が「しっかりと生きた人間を描くこと」が出来ないと駄目なので精進していきたいと思います。 ホワイトハートの読者の皆さんへ、メッセージをお願いします。西崎と申します。この度は「佳作」という身に余る賞を頂くことができ、恐縮の極みです。本当にありがとうございます。喜ぶ半面、未熟ものの自分には荷が重いのではないか、という不安が付きまとっておりますが、少しでも読者の皆様に楽しんでいただけるよう、全力で書いていこうと思います。昔から文章を書くことが好きで、ただ闇雲に書いてまいりましたが、その「書くことが楽しい」という初心を忘れず、精進していきたいです。まだまだ半人前ではありますが、どうぞよろしくお願い致します。