講談社BOOK倶楽部

INTERVIEW

単行本『純銀のマテリアル』刊行記念
吉原理恵子先生スペシャルインタビュー

  • 異世界ファンタジー

単行本
『純銀のマテリアル』

吉原理恵子/著 蓮川 愛/イラスト定価:2,090円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

STORY

『電子オリジナル セント・ラファエロ異聞2 蜃気楼』定価:2,090円(税込)

運命の相手とめぐりあう、異世界転移ファンタジー、
ここに開幕!

日本人離れした灰色の髪と目をもつ水上久遠(みなかみくおん)は、久しぶりに亡き母の故郷である羽葉木に向かっていた。そこは日本の秘境とも呼ばれる風光明媚な田舎でありながら生活は豊かで先進的、そして冠城本家と呼ばれる大地主一族の男性は、目を見張る美形ぞろいという不思議な土地だ。久遠は一族の間にときどき出現するという吉兆のしるし「先祖返り」の外見をもって生まれたために、本家の要請をうけて羽葉木のもとへ来たのだった。遠縁でありながら神祖に近い姿の久遠は「灰色頭(シンデレラ)」のごとく微妙な扱いを受けるが、ある日、蔵の中にあった西洋風の短剣を手にした瞬間、時空を超えて異世界へと飛ばされてしまう。気がつけば、久遠は森の中にいた。そこで偶然出会ったシュライツラー王国の神官ドーシャが、久遠を保護してくれるのだが、彼らの間には説明のつかない繫がりがあるようで……?

special interview

スペシャルインタビュー

自分の書きたいものを

――今回刊行された単行本『純銀のマテリアル』は、講談社での書き下ろし完全新作となりますが、このお話を書こうと思ったきっかけを教えてください。

吉原理恵子(以下吉原)まず、執筆のオファーをいただいたときに「好きなものを書いてください」と言われまして、「いいんですか? 本当に好きに書いちゃいますよ?」と念押ししたのですが「いいですよ、どうぞ」と(笑)。そのときすごく書きたかったのが、シリアスになりすぎない、なおかつ自分のシュミ全開の《異世界転移モノ》でして……。「自分が読みたいものは、自分で書いてしまえ」といういつものパターンで決心しました。

続きを読む

――異世界転生ではなく転移?

吉原そうなんです。一度死んであちらで生まれ直すのではなく、現代日本の男子がある日突然、親戚の土蔵からむこうの世界へ行ってしまう、という。彼が消えたとなれば親族の間でも騒ぎになるでしょうし、日本との繋がりは切れない形で異世界で生きることになるんだろうな……と。そういうしがらみや異世界同士のリンクが残ったまま進んでいくお話を書きたかったんです。それもあって冒頭の、転移する前の日本パートに長めにページを割いていますね。

ドーシャはレアキャラ

――《異世界転移モノBL》ということですが、書いてみていかがでしたか?

吉原それはもう、自分のシュミを全開にしましたので楽しく書けました(笑)。ただ今回は、今までになかった新しいポイントがありまして。いわゆる攻キャラが「これは私が今までに書いてこなかったタイプだぞ」と……。

――なんと。それは具体的には?

吉原ドーシャという男なのですが、彼、とても優しいんですよ。甘々で過保護。こんなにいい人は私の作品的にはレアなんです。ほら、一見優しげでも執着ドロドロ、ゴリゴリ系のドSみたいな攻ばっかりなので(笑)。ちなみに受の子のほうはいつもの、私が得意とする……というか、安定の「好きな路線」の男子です。久遠(クオン)という現代日本から異世界転移してしまう子ですが、いわゆるやんちゃ系でめげずに頑張るタイプですね。ただし、異世界転移直後にかなりひどい目に遭ってしまって、ハリネズミのように周囲を威嚇してますけど。

――ドーシャと久遠は、対照的なふたりという感じでしょうか。

吉原そうですね。でも共通している部分もあるのかな? お互い自分のいる(いた)世界では異質な存在として生まれて、乗り越えられない壁や、すりあわせられない価値観の中で、それでも前に進んで成長していく――地に足がついているタイプなんです。これもまた、私がこういう人たちが好きで、彼らが頑張る話が読みたいので、自分で書くことにしました。とにかく自分が読みたいものを書いた、という感じですね。

ロミジュリ……かもしれない

――『純銀のマテリアル』を、ひとことで表現するなら、どんなお話でしょう?

吉原ひとことでは難しいですね……! でも、あえて言うならいわゆる「ロミジュリ」でしょうか。障害になっているのが家同士の軋轢などではないので、本当の意味ではロミオとジュリエットではないんですが。それぞれ背負わされているものがあって、周囲もこのふたりがくっつくことを望んでいないのに、価値観もまったく異なるのに、どうしようもなく惹かれてしまって、もうお互いしか見えなくなる。そういうお話になっているといいな、と。

――ロミジュリ、いいですね!

吉原いいですよね(笑)。もしかすると、いまの流行りの異世界モノとはちょっと違うかもしれないですが、異なる世界で生まれた者同士の、異種族間の軋轢を超えた先の繋がりが書きたかったんです。メインふたりが乗り越えるべきハードルが高いほど萌えるので……主に私が(笑)。

――ずばり、お気に入りのキャラは誰ですか?

吉原メインのふたりは当然お気に入りなのですが、彼らはひとまず除外するとして(笑)、実は、獣人族のロキがひそかに好きです。私、彼のような立ち位置のキャラクターが昔から好きなんですよ。メインふたりのそばにいて、決して本意ではないのに観察者になってしまいがちなタイプ(笑)。彼の視点からのふたりの様子の描写など、かなり想像が膨らみます。

――書いていて楽しかったこと、大変だったことは?

吉原楽しかった部分はすべてです。大変だったことは特になくて……書いているうちにどんどん「あれ、これは1冊で終わる規模の話じゃないな」と気づいて焦ったところくらいでしょうか。この本の中でも大変なことは起きているのですが、今後、さらにドーシャと久遠を取り巻く状況がシビアになるのではないかなと。そのあたりは、あまり遠くないタイミングでお見せできたらなと思っています。

「吉原的甘々妄想」です

――ドーシャと久遠は今後、さらにラブ度が深まるのでしょうか。

吉原そこですよね。最初にも言いましたが、これまでドーシャみたいな「甘やかす、溺愛する、愛するものをとにかく庇護する」という寛容(?)な攻を書いてこなかったので(笑)。彼が久遠をどこまで溺愛するのか想像がつきません。ある意味、最強の可能性を秘めていますね。私自身、ドロドロの愛憎劇ではない路線(今回はまさにその「ではない」路線の物語)だと、反動でラブでないところを楽しく深く掘り下げてしまう性格でもあるので……そのあたりの衝動をおさえつつ(笑)、どう動くか想像できないドーシャに頑張ってもらおうと思います。

――つまり溺愛モード突入のふたりを見て、ロキが悶えるという流れに?

吉原あるかもしれない(笑)。砂を吐きながら「おまえら何やってるんだよー!」みたいな。ロキは大変そうですね……。

――最後に、読者の皆さまへメッセージをお願いします。

吉原講談社では新参者の吉原理恵子です。これまでホワイトハートでは、他社刊行作の加筆修正バージョン(『新装版 呪縛―とりこ―』『新装版 対の絆(上・下)』)でお世話になっていましたが、今回、完全新作ということで、単行本を出していただけることになりました。今作『純銀のマテリアル』は「吉原的甘々妄想」の最強バージョンになっていると思いますので、ぜひお手にとってみてください。また、このタイミングで新装版の既刊を合わせた電子書籍(『吉原理恵子 全3冊合本版』)も発売されましたので、そちらも一緒にお楽しみいただけますと幸いです。

――ありがとうございました!

閉じる