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霞が関で昼食を 幸せのその先は

ふゆの仁子/著 おおやかずみ/イラスト 定価:本体690円(税別)

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STORY

霞が関で昼食を 幸せのその先は 定価:本体690円(税別)

霞が関エリートたちの胸を焦がすピュアな恋

全寮制男子校で先輩後輩だった立花(たちばな)と樟(くすのき)が、財務省の新規部署で再会して数ヵ月。ようやくはじめられたふたり暮らしは予想外のことだらけで、立花は戸惑うばかりだ。樟からは固い覚悟と深い愛情が感じられ、罪悪感を抱いてしまう立花。お互いぎこちない雰囲気を何とかしようと食事の約束をするが、直前になって樟に急用が入り延期に。だが件の店に、過去に関係があったという国会議員・茅(ちがや)と共に樟が現れて―!?

著者からみなさまへ

ゆっくりゆっくり歩んできた立花と樟。作品中で再会して半年が経ち、二人の関係は表向きだけではなく互いの内面でも変化して三つ目の季節が訪れようとしています。今回は別名「立花が腹を括る編」となります。結局は一人でぐるぐるしているだけのいつものパターンではありますが、二人がさらなる関係に進むためのステップを見守ってください。

さて、今回も作品中で立花はたくさん食事をしております。書いている私がお腹が空きましたしひもじくなりました。ただいい年をした男性たちのお話なので、なかなかスイーツ系に至らないのが残念。ベタベタに甘い物を食べるベタベタに甘いエピソードもそろそろ書きたいところです。

美味しい物を美味しく食べられることほど幸せなことはありませんよね。当たり前のことを当たり前と思える幸せに気づくために、立花は一歩ずつ前に進んでいます。今回もお腹を空かせてお読みいただけると嬉しいです。

初版限定特典

パティシエ誘惑レシピ

初版限定 書き下ろしSS「幸せということ」より

 食卓には、炊き立ての白いご飯にたまねぎとワカメの味噌汁、ひじきの煮物にキュウリの糠漬け、そして昨夜作ったぶり大根が並べられた。
「念願のぶり大根、美味そうです」


……続きは初版限定特典で☆

special story

書き下ろしSS

『霞が関で昼食を 幸せのその先は』番外編
「ぶり大根作りました」
ふゆの仁子
★ぶり大根レシピ付き★

 土曜日の午後、ランチに出たときに樟(くすのき)に夕飯のリクエストを聞いたら、「ぶり大根」と即答だった。
「ついこの間食べたばかりだろう?」
 呆れたように立花(たちばな)が言うと、樟は不満気な表情になる。
「食べたからです。美味しかったですし、作る過程を見ていたいんです」
 立花が喜ぶ台詞を樟は平然と口にする。こんな風に言われてしまったら断れるわけもない。
「ぶり大根、大人気だな」

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 何気なく呟くと、樟が首を傾げた。
「俺の他にも誰か、ぶり大根を食べたいと言ってたんですか?」
「香帆(かほ)……高萩(たかはぎ)が、この間会ったときに」
「そうなんですか」
 あのときのことを思い出すと、お互いの事情はわかって腹を割って話をしていても、少しだけ古傷が痛む。
「君に会いたいと言っていたから、今度改めて紹介する」
「——ありがとうございます」
 それから、買い物をして帰る。
 しかし買ったのはぶりの切り身のみだ。
「これだけでいいんですか?」
「他の食材は家にある。この間のぶり大根もシンプルだっただろう?」
「確かに」
「ぶりのあらを煮ても美味いが、今日もこの間と同じで切り身にしておこう」
「はーい」
 帰宅してすぐ、立花は夕飯用のお米をとぐ。
「もう夕飯の準備ですか? まだ早いのに。コーヒー飲みません?」
「君がコーヒーを用意している間に下ごしらえを済ませてしまう」
「下ごしらえ?」
「米のとぎ汁で大根を下茹でしておくと、大根の苦味やアクが取れて、野菜本来の美味さが味わえる」
「知らなかった」
 とぎ汁を入れた鍋を火にかけている間に、買い置きしてあった大根の半分の皮を剝き、2センチ程度の輪切りにし、隠し包丁をいれた上で面取りをする。
「こうすることで見栄えもよくなるし煮崩れも防げる……が、一人で食べるときには、こんなことしないが」
「すごいなあ……知らないことばかりだ」
 隣で立って立花の手元を見ていた樟は感嘆の声を上げる。
「沸騰したとぎ汁で10分から15分程度茹でる」
 ぐらぐらと煮立ったとぎ汁の中に大根を投入すると、次はぶりの下ごしらえだ。
 パックから取り出した魚を軽く水洗いして、皿の上に置いてから軽く塩を振る。
「これで15分程度置いて、沸騰した湯を全体にかけてから冷水でもう一度洗う。こうすることで魚独特の生臭みが取れる」
「なるほど」
 そうしている間に大根を茹ではじめてから15分が過ぎたのでざるにあげた。
「なるほど。この間食べたぶり大根、まったく臭みがなかったのは、たっぷり葱や生姜を使っているせいだと思ってましたが、こういうひと手間のおかげなのか」
 なるほどと樟は唸った。
「煮汁は、水600ccに酒が100cc。みりんが100、醬油が120。まあ、目分量だが」
「その目分量がよくわかりません……」
「もし君が作るなら、きっちり量は計ったほうが失敗は少ない」
「ふむふむ」
「ここに、スライスした生姜を投入。下茹でした大根を煮る」
「どのぐらいですか?」
「15分ぐらいかな」
「なんでも15分ですね」
「そういえばそうだな。まあ、とにかく味が染みたら、下処理を済ませたぶりを投入する」
 先ほど立花が説明したように、沸騰した湯を全体にかけて色が変わったところで冷水で洗う。ペーパーで水気を拭いたぶりを、大根を煮ている鍋に入れる。そして軽くくしゃっと潰して拡げたアルミホイルで落とし蓋をする。
「落とし蓋をして、ぐらぐらしない程度の火で20~30分煮込む」
 ここで一段落だ。
 樟が淹れてくれたコーヒーで人心地つく。
「ぶり大根の他、何を作ろうか」
 買い置きしてあったクッキーが、ブラックコーヒーに良く合う。
「冷蔵庫にある野菜で適当にサラダ作ります。スモークサーモンありましたよね、確か。あとはお漬物と、茄子があったから茄子の味噌汁に炊き立ての白いご飯があれば完璧です」
「ひとつ足りない」
 立花の指摘に樟は首を傾げる。
「なんでしょう?」
「冷えたビール」
 笑顔で言うと、樟も笑顔になる。
「ですね」
ごちそうさま。



ふゆの仁子先生のぶり大根レシピ

HP掲載のSS連動ですっかり恒例となったふゆの仁子先生のレシピ。今回はほこほこと湯気のたつ、ぶり大根のレシピが届きました! もちろん写真もふゆの先生が撮ってくださいました。大根の美味しくなるこれからの季節に、ぜひ作ってみてくださいね!

●ぶり大根

〈材料〉
ぶり 3切れ
大根  1/2本
生姜 1かけ
〈調味料〉
★水 600cc
★酒 100cc
★醬油 120cc
★みりん 100cc

【下ごしらえ】
①大根は2センチほどに切り、隠し包丁をいれて面取りをする。沸騰させた米のとぎ汁で15分ほど下茹でして洗っておく。(写真1・写真2)
②ぶりの切り身は半分に切り、軽く塩を振って10~15分置く。その後熱湯をかけてすぐに冷水で洗い水気を切る。(写真3)

【調理】
①★の水と調味料を合わせたものに、下ごしらえを済ませた大根と、生姜1かけをスライスして一緒に15分ほど煮る。(写真4)
②大根に味が染みてきたところで、下ごしらえを済ませたぶりを投入する。(写真5)
③ぐらぐらしない程度の火で、落とし蓋をしてさらに20~30分煮る。
④出来上がり!(写真6)

(写真1)

(写真2)

(写真3)

(写真4)

(写真5)

(写真6)

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