STORY
定価:本体690円(税別)
眞鍋組最大のピンチに氷川は――?
美貌の医師・氷川諒一(ひかわりょういち)は、眞鍋(まなべ)組二代目組長・橘高清和(きったかせいわ)の妻、つまり二代目姐でもある。だが、眞鍋組の周囲は常にきな臭く、氷川は大切な清和のためにも平和的な稼業の開発を推進したくて仕方がない。そんな中、氷川の耳に清和と支倉(はせくら)組組長の娘・涼子(りょうこ)との入籍話が飛び込んでくる。一方で眞鍋組と寒野(かんの)組のシマ争いも激化して――ついに清和最大の危機が!?
定価:本体690円(税別)
美貌の医師・氷川諒一(ひかわりょういち)は、眞鍋(まなべ)組二代目組長・橘高清和(きったかせいわ)の妻、つまり二代目姐でもある。だが、眞鍋組の周囲は常にきな臭く、氷川は大切な清和のためにも平和的な稼業の開発を推進したくて仕方がない。そんな中、氷川の耳に清和と支倉(はせくら)組組長の娘・涼子(りょうこ)との入籍話が飛び込んでくる。一方で眞鍋組と寒野(かんの)組のシマ争いも激化して――ついに清和最大の危機が!?
初版限定 豪華SSイラストカード
「カリスマは甘いのがお好き」より
噓だ、と清和はありえない報告を一蹴した。傍らにいるリキにしてもそうだ。
「間違いだ」
清和は組長の顔で切り捨てたが、あってはならない報告が続き……。
……続きは初版限定特典で☆
『龍の覚醒、Dr.の花冠』番外編
「サメの魂胆、Dr.ホームズの美学」
樹生かなめ
どこか郷愁を誘う汽笛が鳴り響く。
深夜、横浜港に停泊中の大型船、サメはデッキのチェアに寝そべり、ライトスタンドの明かりでグルメガイドを眺めながら、眞鍋組二代目組長と二代目姐の痴話ゲンカに耳を傾けた。タブレットのモニター画面には、楚々とした日本人形に振り回されている不夜城の覇者が映しだされている。馬鹿らしくて真剣にチェックする気にもなれない。
『清和くんは若くてかっこいいから、いくらでも綺麗な女の子と遊べるね。お肉が好きな清和くんは女の子が好きだよね。女の子もお肉だからねっ』
『…………』
『そんなにお肉が好きなら、どうしてサメくんたちの名前をお魚にしたの? どうして松阪牛とか飛驒牛とか但馬牛とか阿蘇のあか牛とかにしなかったの?』
俺が松阪牛か飛驒牛か但馬牛かあか牛、とサメは二代目姐こと氷川諒一の言葉に意表をつかれ、グルメガイドを落としそうになる。ただ、モニターに映る橘高清和の表情はこれといって変わらない。
『…………』
『清和くんはどうしてセクシーダイナマイトみたいな女性やアイドルみたいな女の子を近づけるの?』
『…………』
『セクシーダイナマイトみたいな女性やアイドルみたいな女の子はサメくんに捨てなさい……じゃなくて、あげなさいっ』
姐さん、俺はゴミ箱か、とサメは小声でモニター画面の二代目姐に突っ込んだが、当然の如く返事はない。不夜城の覇者は依然としてだんまりを決め込んでいる。この自制心は称賛に値するが。
『…………』
『僕の清和くん、いい子だから、サメくんに女の子をあげてっ』
『…………』
嫉妬で狂う姉さん女房に対し、口下手な亭主は宥めるどころか、誤解を解くこともできない。呆れるぐらい繰り返されている眞鍋組のトップの日常だ。そうこうしているうちに、清和はさりげない動作で監視カメラのスイッチを切った。ようやく、眞鍋の昇り龍と白百合の対決の場がベッドになるのだろう。
「……ヤれヤれ、さっさとヤればいいんだ。思う存分、勝手にヤってくれ」
本日の業務終了、とばかりにサメが興味を引かれた飲食店のページに付箋を貼っていると、外人部隊時代からの部下である銀ダラがデッキに出てきた。そうして、予想だにしていなかった報告を受けた。
「……銀ダラ、俺の耳が姐さんの肉セリフで腐った。もう一度」
俺の聞き間違いか、深夜の海の気まぐれか、銀ダラのタチの悪いジョークか、とサメは腹心の部下を調べるように見つめた。時折、長いつき合いの男は手のこんだ悪戯をする。
「新宿の浅見商事社長の依頼、ターゲットの平野慎也は聖アンデレ病院に搬送され、一命を取り留めた。ミッション、失敗」
多くのミッションを同時に遂行しているため、サメの思考回路は複雑に絡み合う。けれど、迅速に頭脳にインプットした浅見商事のデータを引きだした。表向きは東南アジアの商品を扱う商事会社だが、利益を叩きだしているのは拳銃の密売だ。
「新宿の浅見商事の社長といえば、拳銃密売の浅見健造だな。ゲスオヤジ」
「oui」
「浅見ゲスオヤジからスタッフで義弟の平野慎也のヒット・オーダーが入って、クソ坊ちゃんは先代の義理で嫌々ながら引き受けたんだよな。スタッフを始末するのは三人目だよな」
浅見健造の依頼により、去年、若い社員を酔わせて溺死させ、中年社員を心不全に見せかけて始末したばかりだ。今回の平野慎也で三人目である。
「oui」
「浅見ゲスオヤジってコンクリート詰めにして海に沈めたい奴だよな」
「oui」
「クソ坊ちゃんはクソ忙しい俺たちに浅見フンの依頼を押しつけたんだよな」
依頼内容が内容だけに、清和とリキは浅見を問い質したという。
『……あいつ、慎也はあんなに目をかけてやったのに、サツにチクろうとしていやがるんだ。うちがサツにパクられたら眞鍋も困るだろう。慎也をさっさと消してくれ』
平野は拳銃密売について警察にリークしようとしている、とのことだった。事実、だいぶ前から浅見商事には警察のマークがついていたのだ。昨今、拳銃を使った物騒な事件が勃発しているからだろう。
「oui」
「クソ坊ちゃんと虎はウナギを指名したんだよな」
諜報部隊とも実働部隊とも目される部隊のメンバーには、当然のように得手不得手があるが、殺人という一番苦しいミッションを確実にこなすのはウナギだ。潜入捜査や情報収集では幾度となく遅れを取ったけれども、今までウナギが殺人指令を失敗したことは一度もない。
「oui」
「ウナギがコロシに失敗したのか?」
「oui」
クソ坊ちゃんが白百合にブチ殺されることがあってもそれはない、とサメはグルメガイドを手に一蹴した。
「銀ダラ、噓をつくなら、もう少しエスプリの利いた噓をつけ。パリを離れてからエスプリが消えた」
サメはサンジェルマン・デ・プレを意識して肩を竦める。かつてサメが銀ダラと一緒にシシリー・マフィアから逃げ回った優雅な街だ。
「ムッシュ、残念ながら、噓じゃない」
銀ダラも欧米人のように派手なゼスチャーをしたが、エスプリどころか余裕は微塵も感じられない。おそらく、ウナギのミスに動揺しているのだろう。
「猿が木から滑り落ちても、ウナギがコロシでしくじるわけがない」
「ボスが独身男であるということと同じぐらい事実だ」
埒が明かないと悟ったのか、銀ダラはサメの腕を引いて立たせ、引き摺るようにしてモニター室に進む。
果たせるかな、諜報部隊のメンバーたちがかつてないウナギのミスに騒然としていた。
「フェスティバルだね」
「ボス、我らがサメ、その目で見ろ」
中央のモニター画面にはヒット現場から一番近い新宿の総合病院が映されている。ターゲットは搬送された聖アンデレ病院のICUで医療機器に囲まれていた。当然のように屈強な警察官たちの護衛がついている。
「木村先生がそばにいたのか?」
今日、別件のミッションがあり、サメは現場にはいなかったが、予定通り、ウナギが白昼堂々、街中でターゲットの急所をナイフで刺したという報告を受けた。搬送された医療機関で死亡が確認されることを待っていたのだが。
その時、傍らにモグリ医者の木村がいればどうなるだろう。何しろ、天才外科医の神の手は死人も黄泉の国から連れ戻す。
「ホームズ先生がそばにいました」
銀ダラが意味深な顔で口にした医師に覚えがなく、サメは怪訝な顔で聞き返した。
「ホームズ?」
ホームズと言えば、コナン・ドイルが生んだ世界で最も有名な名探偵がサメの脳裏を過ぎる。
「速水俊英先生です」
その名を聞いた瞬間、サメの眼底に神の手を持つ秀麗な天才外科医が浮かぶ。速水俊英、まだ若いのに木村に匹敵する天才外科医だ。
「……あ、あの変人天才外科医」
俊英は速水総合病院の院長の長男として生まれ育ち、幼い頃から神童と称えられ、私立の雄として名高い清水谷学園中等部に入学してから、アメリカに留学した。海の向こうでもいかんなく才能を発揮し、若くして天才外科医として尊敬を集めたが、帰国した途端、古い洋館で探偵事務所を開いた。いったい何があったのか、医療界ではいろいろな噂が流れている。ただ、はっきりしていることは、類い希な天才外科医が規格外の変人ということだ。
「さすが、ボス、速水俊英について知っているんだな」
「俺が死にかけた時、木村先生が酔っぱらって使い物にならなかったら困るからな」
医者によって助かる命も助からない。言い替えれば、医者によって助からない命が助かる。サメはメンバーや眞鍋組構成員のため、奇跡を起こせる医師をピックアップしていた。外人部隊時代のように、未熟な医師の治療で部下を失いたくはない。
「ボス、俺も同じ考えでゴッドハンドを探していた。木村先生クラスのゴッドハンドはホームズ先生ぐらいだ」
医療界で『プリンス』と称賛されていた上泉昭平こと木村の外科医としての業績は素晴らしい。俊英も『日本の誉れ』とまで賛嘆されていた天才外科医だ。若いから奇跡の数は上泉に及ばないが、その実力は勝るとも劣らないはず。
「俺がクソ坊ちゃまを刺し殺したら、木村先生じゃなくてホームズ先生を呼んでほしい」
「それがホームズ先生、医者を廃業したんだよ。家族や速水総合病院関係者が卒倒した」
モニター室の数々のモニター画面のひとつには、帰国した俊英に副院長のポストを用意していた速水総合病院が映しだされている。閣僚や代議士、高級官僚に優良企業の経営者、世界的に有名な音楽家や著名なデザイナーなど、各界のVIPを常連患者に持つ医療機関だ。二十四時間体制のセキュリティ・システムも万全で、二代目姐が勤務する明和病院とは比べようもない。
「医者を廃業したのに、平野慎也を助けたのか?」
木村先生と同じように瀕死の怪我人がいたら勝手に身体が動くタイプか、とサメはモニター画面にアップされた絶世の美青年を横目で見た。男性医師にしては珍しく、ファッションモデルとなんら遜色ない長身の美形だ。
「事件だと思ったんだろう」
「ホームズ先生にとって平野慎也は事件の重要参考人かな?」
「たぶん、ホームズ先生はそう思っている」
「ホームズ先生の助手のワトソンくん、やけに可愛いな」
モニター画面には速水院長や妻子とともに俊英の助手である石丸潮も映しだされた。速水家がお目付け役として次期院長につけた童顔の青年だ。俊英に『ワトソン』と渾名され、日々、振り回されているらしい。
「oui」
「俺のタイプ」
チュッ、とサメはモニターの中の助手に向かって投げキッスを飛ばした。
「そうだと思った」
「ホームズとワトソンごっこだ。なかなかエスプリが利いている」
天才と変人は紙一重だと知っているが、美貌の天才外科医の変人ぶりは際立っている。何せ、ホームズと自称しているのだから。
「警視庁の刑事がレストレード警部です」
「レストレード警部までいるのか。これはルパンが必要だね」
「ルパンよりモリアーティ教授だ」
「俺はモリアーティ教授よりルパンがいい」
「……じゃ、ボス、ルパンになる? どうする?」
今日中に聖アンデレに乗り込むか、毒殺や狙撃でいいか、刺殺に拘るのか、と銀ダラは言外に尋ねている。なんと言っても、二代目が引き受けた殺人依頼だから、このままターゲットを放置することはできない。
「俺は筑波山の筑波うどんに呼ばれている」
スチャッ、とサメはキザっぽく右の指二本で挨拶をした。元々、この殺人依頼は気が進まなかったし、眞鍋の龍虎コンビにしても依頼者である浅見健造を心の底から唾棄している。
「今回は蕎麦じゃなくてうどん?」
「そういうことだから」
サメは出入り口に進んだが、突然、諜報部隊随一の殺し屋が現れた。ウナギは地味なスーツを身につけ、平凡なサラリーマンにしか見えない。
「サメ、申し訳ない。ターゲットを仕留められなかった」
ウナギに深々と頭を下げられ、サメは手をひらひらさせた。
「……いや~っ、あの天才外科医に出張られたらしょうがない。あれは死人も生き返らせる天才外科医だ」
俊英の変人ぶり以上に外科医としての手腕は素晴らしい。サメは言わずもがな銀ダラ、ナマズなど、ほかのメンバーは誰一人としてウナギを咎めたりはしない。それどころか、不運に同情しているメンバーが多い。
「俺のミスです」
ウナギが下げた頭を上げないので、サメはその場でステップを踏んだ。
「そんなに思い詰めるな。Dr.ホームズが応急処置してオペまでしたら、ゴルゴ13が狙撃したターゲットでも生き返る」
「この責めはいかようにも」
ウナギは生真面目すぎるところが最大の欠点だ。サメは殺人機械として育てられた孤児に胸が痛む。前に所属していた闇組織ならば失敗は死を意味した。時に成功しても死に繫がった。
「責任なんて取る必要はない。これから俺と一緒に筑波山だ。深夜の霊山を見上げ、夜が明けたらロープウエイで上ろう」
「二度目のチャンスをください」
「ウナギは真面目すぎるから心配だ。もうウナギはシンガポール・マフィアの殺し屋じゃないから心に余裕を持て」
どんな状況であれ、失敗しても責任は取らせない。口封じのために部下は始末しない。部下を犬死にさせない。充分な費用や報酬を用意する。これらが眞鍋の昇り龍に忠誠を誓う際の条件だ。
「そういうわけには……」
ウナギは親の顔どころか名も知らない孤児で、物心ついた時にはシンガポール・マフィアの殺し屋として教育されていたという。出逢った頃から、死神さながらの殺し屋だった。
「筑波の筑波うどんがいやなら、大洗の海鮮丼にしようぜ」
サメがウナギの肩を抱いて出入り口に進むと、不気味なオーラが漂ってきた。確かめるまでもなく、眞鍋組の魔女こと祐だ。
ヤバイ、逃げるぞっ、とサメがウナギに耳打ちするや否や、スマートな参謀が現れた。
「サメ、どこに行く?」
「本場のナポリピッツァが俺とウナギを呼んでいる」
逃げる、ここで逃げないと煩い、煩わしい、とサメは全神経を傾け、眼底に脱出ルートを描いた。何より、これ以上、天才外科医が絡んでいる殺人依頼にウナギを関わらせたくない。
「時間の無駄だ。本題に入る。浅見社長からクレームが入った」
「モンスタークレーマーは無視するか、出入り禁止にしろよ。俺の行きつけの蕎麦屋はモンスタークレーマーを出入り禁止にしたら売り上げが上がったぜ」
「サメ、時間の無駄遣いをするな。ターゲットの平野慎也を仕留めろ」
祐の背後には二代目の右腕と目されるリキ、ショウや宇治、吾郎など、幹部候補の若い構成員たちが控えている。頭脳派幹部候補の卓が銀ダラに駆け寄り、あれこれ今後について話しだした。
「軽く言ってくれるぜ」
「ターゲットを仕留められなかった非はうちにある」
要はお前たちの失態だ、と眞鍋組で最も汚いシナリオを書く策士が視線だけでサメを詰る。ますますウナギから発散される悲愴感がひどくなった。
「ホームズ先生の件は聞いていない」
サメがモニター画面に映る美麗な天才外科医を指すと、祐の筆で描いたような眉が顰められた。
「速水俊英に関し、誰も予知できなかったが、それでもミッションを遂行するのが実働部隊の仕事だ」
「魔女、軽々しく言うな」
「文句は初代組長に言え」
祐が溜め息混じりに言ったように、眞鍋組初代組長が先代の浅見商事社長に世話になったらしい。その恩に清和は縛られていた。
「初代組長の義理とやらは先代の社長に対してだろう。息子の浅見健造は最低ゲス野郎じゃないか。そもそも、拳銃密売のミスは浅見健造の妻のせいだ」
始末するなら浅見夫妻だろ、とサメは暗に匂わせた。
「眞鍋は仁義を重んじる」
「眞鍋はカタギを大切にするヤクザじゃないのか?」
浅見健造による連続殺人依頼の発端は妻が拳銃密売で穴を空け、莫大な謝罪金が必要になったことだ。私財を投げ打てばいいものを生命保険金目当てで社員を始末した。清和は先代の義理で浅見の殺人依頼を受け、サメは今までにふたり、浅見商事の社員を始末している。実行したのはウナギだ。
「今、浅見の拳銃密売ルートをパクられるのはヤバい。平野慎也を始末しろ」
浅見の妻の弟である平野慎也がスタッフたちの死に不審を抱き、極秘に調べていることは確認した。これを見逃せば、浅見夫妻が破滅するだけに留まらない。先代より拳銃密売ルートには眞鍋組も絡んでいた。
「浅見にはもうサツのマークがついているじゃねぇか。いくら政治家のバックがあっても、パクられるのも時間の問題だ」
「今、浅見健造がパクられると困る」
祐の懸念は説明されなくても、いやというぐらいわかっている。最新のパーソナルコンピューターの前では、卓と銀ダラが今後の十秒単位のタイムスケジュールを立てていた。それでも、サメは部下たちのためになるように粘った。少しでも部下たちに利があるように。
「それをなんとかするのが魔女の仕事」
「その言葉はそっくりそのまま返す」
「浅見のために、指一本、動かしたくない」
部下を大事にしない奴に生きる価値はない、とサメの魂には外人部隊時代より深く刻まれている。自身、入隊時に隊長に恵まれたから激戦地でも生き延びることができたのだ。それ故、スタッフを生命保険金目当てで始末する浅見には反吐が出る。
「サメ、臨時ボーナスを出す」
臨時ボーナスが出たらシマアジは楽になるな、とサメは長患い中の部下の母親を思った。シマアジは危険な仕事をした報酬で、実母の入院費を払い続けている。なかなかの苦労人だが、メンバーの中ではそうでもない。何せ、シマアジは実母に愛された記憶があるから。
「臨時ボーナスぐらいで俺の心に天使は舞い降りない」
「臨時ボーナスで手を打て」
ポンッ、と祐に宥めるように肩を叩かれ、サメは顔を派手に歪めた。
「いくら?」
「眞鍋の昇り龍は人使いは荒いが、経費や報酬は惜しまない。激戦地に満足な装備もさせずに放り込むどこかの首相と一緒にするな」
祐はなんでもないことのように、サメの過去に言及する。
「臨時ボーナス、弾んでもらうぜ」
「とりあえず、ターゲットを仕留められなかったのはうちのミスだ。予定通り、平野慎也を仕留めろ。話はそれからだ。サメ、直々に指揮を執れ」
「栗のモンブランが俺を呼んでいる」
「今川焼にしろ」
「焼き栗が俺を呼んでいる」
「今川焼だ」
祐は一呼吸置いてからウナギに視線を流した。
「ウナギは別件のヒットだ。今すぐ台湾に飛んでほしい」
パチンッ、と祐が指を鳴らした途端、中央の巨大なモニターに台湾のシンボルのひとつである台北101や故宮博物院、龍山寺や士林夜市が映しだされた。そのまま台湾マフィアの総本部であるタワービルにズームアップ。
「台湾?」
「姐さんの実母だと名乗る女性から連絡が入った。調べたら赤の他人だ。シマを狙う台湾マフィアの罠だった」
モニター画面には絶世の佳人が現れたが、台湾に渡った日本の売れない女優だ。
またかよ、とサメはげんなりしたが口には出さない。そもそも、二代目姐の出自は眞鍋組最大の謎とされていた。どんなに手を尽くして探してもわからず、海外で誕生した可能性も視野に入れていた。施設によれば二代目姐は保護時『生まれたばかりの赤ん坊』とのことだったが。
「ターゲットは台湾マフィアのボスですか?」
「ボスではなく、頭の悪いNo.5の単独だ」
「ターゲットはNo.5と姐さんの実母だと騙った女?」
日本の売れない女優はヤクザの娘であり、No.5の愛人だった。ちゃんと自分の役割と意味は理解しているに違いない。眞鍋組の昔気質の大黒柱なら女性に手は出さないし、その薫陶を受けた清和にしてもそうだが、最愛の恋女房が絡めば違う。
そこに手を出したら終わり、とサメはモニター画面の中の売れない女優に語りかけた。察するに、二代目を侮ったのだろう。
「話が早い。女だからと言って見逃せば次から次へとこの手の罠を仕掛けられる。ふたり一緒にいる時に始末してほしい」
金はいくらかかっても構わない、と祐が悠然と言い放つや否や、宇治は金がぎっしり詰め込まれたアタッシェケースを差しだした。ショウはブラックカードをウナギに手渡す。こういった仕事は武闘派幹部候補にはできない。
「了解」
ウナギが低い声で承諾すると、それまで無言だったリキが初めて口を挟んだ。
「ウナギ、こんな難しいヒットはお前にしかできない。頼んだ」
最強の虎の言葉に対し、ウナギは一礼した。それから、台湾入りするメンバーを選出し、モニター室から出ていく。
サメは祐とリキの迫力に負け、平野慎也殺害の計画を練った。いやでも眞鍋のためにしなければならない仕事だ。
やりたくねぇ、やりたくねぇ、やりたくねぇ、安納芋パイが俺を呼んでいる、とサメは子供のようにさんざん駄々をこねた。地団駄を踏んでも体力を消耗するだけだとわかっているが、せずにはいられなかったのだ。
「……なら、姐さんのガードに回ってくれますか?」
卓に真顔で言われ、サメはとうとう観念した。
「姐さんのガードはいや」
それだけはいやなの、絶対にいや、死んでもいや~ぁ、とサメは首をぷるぷる振った。
「姐さんのガードを拒むなら、平野慎也のヒットをお願いします」
「始末するだけでいいんだな」
「祐さんからのお願いです。入院患者やスタッフ、警察官に死傷者を出さないでください」
入院患者やスタッフはわかるが、警察官相手の配慮は頭が痛い。
「あ~っ、面倒だな~っ」
「聖アンデレ病院ならセキュリティは甘いです。警備員も真面目じゃありません。だから、簡単に監視カメラは設置できるし、買収もできました」
「それでもさ~っ、気が乗らないな~っ」
サメは文句をたらたら零しながら、速水俊英という天才外科医に扮装した。部下たちもそれぞれ速水総合病院のスタッフに扮装する。
「ボス、絶対安静のターゲットは依然として聖アンデレ病院のICUにいます。警察官の見張りが多い……あ、新しい報告です。イワシの報告を聞いてください」
モニター画面には聖アンデレ病院のICUや裏口から出ていく救急車が映しだされた。
「絶対安静のターゲットが搬送された聖アンデレ病院から警察病院に移送されました……あ、違うようです。シマアジの報告をお聞きください」
「若い刑事がターゲットに変装して聖アンデレのICUに待機、ふたりめの若い刑事もターゲットに変装して警察病院に移送、本物のターゲットは聖アンデレの患者のように見せかけ、速水総合病院に移送……かもしれません。確認できませんでしたが、速水総合病院に救急車で誰かが搬送されたのは確かです」
ターゲットに扮した刑事が聖アンデレと警察病院にいて、本物のターゲットが速水総合病院にいる可能性が高いという。
ふっ、とサメは不敵に鼻で笑った。
「ホームズ先生の小細工か?」
「レストレード警部の小細工だと思います」
卓は搔き集めたデータを元に判断を下し、タブレットに警視庁の刑事を映しだした。
「レストレード警部? ……ああ、体育会系の刑事だな」
「三浦一馬、マジに浅見社長をしょっぴく気です」
「今時、珍しい熱血刑事だな」
「……確かに、今時珍しい熱血刑事……彼なら絶対安静であっても、悪評高い聖アンデレに大事な容疑者を置いておかないかもしれませんね?」
どう思われますか、と卓は伏し目がちにサメの見解を伺う。
「そうだな。聖アンデレにいるターゲットは刑事だ。警察病院か速水総合病院、どっちかな?」
魔女に仕込まれるだけあって使える奴だな、とサメは改めて箱根の旧家の令息に感心した。これがショウや宇治ならこういった推測はできない。
「ホームズ先生は助手と探偵事務所に帰りました」
モニター画面には古い英国風の洋館に入る長身の探偵と小柄な助手が映しだされた。
「ホームズ先生は聖アンデレにも警察病院にも速水総合病院にも泊まらなかったのか」
サメは報告を聞いた時点でターゲットは速水総合病院に移送されたと見当をつけた。
何せ、速水総合病院のスタッフの身元はしっかりしているし、各自、人の命を預かっているというプライドが高い。待遇もいいから、そう簡単に買収できないだろう。
「サメさん、合図を……」
卓の言葉を遮るように、サメは手を振りながら言った。
「……ちょっと待て」
「サメさん?」
「今、速水総合病院に乗り込んでも、警察の目が厳しいはずだ。そのうちに何かある」
今は乗り込んでも犬死にする、とサメの本能が告げていた。アラブの激戦地、血の海に倒れた部下たちが瞼に浮かぶ。悔やんでも悔やみきれない過去だ。
「浅見社長からクレームの電話が鳴りっぱなしですが」
卓の端整な顔には、浅見社長夫妻に対する嫌悪感がありありと表れていた。
「浅見ゲスには下手に動くなと釘を刺しておけ」
「はい。それは祐さんがきっちりと釘を刺しています」
「そこでだ。箱根のお坊ちゃま、今から言うことをよく聞いて考えてくれ」
「はい?」
「それでなくても移送して危ないのに、このレストレード警部なら絶対安静のターゲットの命を縮める。それでくたばったら万々歳」
モニター画面の中、レストレード警部こと警視庁の三浦一馬という刑事が指揮を執っている。命がけで拳銃密売ルート撲滅に奮闘していることは間違いない。サメ独特の言い回しを頭脳派幹部候補はきちんと理解した。
「……つまり、レストレード警部がターゲットから無理な事情聴取をして、命を危うくさせる?」
「ありえないと思うか?」
サメが意味深な笑みを浮かべると、卓は同意するように頷いた。
「ありえます」
「レストレード警部の熱血次第だ。ちょっとだけ待て……ただ、念のため、警察病院に移送されたターゲットが本物か偽物か確かめろ」
サメの判断に誰も異議を唱えなかった。
果たせるかな、清々しいぐらい爽やかな朝、予想通り、正義感に駆られた一馬は生命維持装置によって生かされているターゲットに詰め寄り、容態を急変させたらしい。速水総合病院に侵入しているメンバーから、心待ちにしていた報告が入って、サメは卓と手を取り合った。
「……やった。これでトドメを刺す必要はない」
サメが満面の笑みを浮かべると、卓は涼やかな目で称えた。
「サメさん、さすがです。この調子で姐さんの行動も当ててください」
「卓、それは何度生まれ変わっても無理」
「サメさんならできます」
「そんなにおだてても無理だ」
喜んだのも束の間、天才外科医こと俊英が呼びだされた。それも命が尽きる前に到着してしまった。妨害できなかったのだ。警察官に扮して侵入した部下から、内部の音声が届けられる。雑音とともに警視庁の三浦一馬の声が聞こえてきた。
『変人、頼む』
一馬が低い声で言うと、俊英の氷のような叱責が飛んだ。
『レストレード警部、再教育が必要だね』
『変人探偵、警察病院で容疑者に化けていた刑事が狙われた』
『命は?』
『侵入者は影武者だとわかった途端、逃げていった』
『取り逃がしたのか?』
俊英の冷たい非難に対し、一馬は言葉を飲み込んだりはしない。
『プロだ』
メンバーから送られてきた俊英と一馬のやりとりを聞きつつ、サメは思考回路を働かせる。さしあたって、俊英の神の手によってターゲットは三途の川から引き摺り戻されるはずだ。
「ホームズ先生が出張ったら駄目だ。ターゲットは持ち直す」
「予定通り、乗り込みますか?」
「乗り込むしかないだろう」
よっこらせ、とサメは重い腰を上げると、ネクタイを締め直した。
鏡を覗けば神の手を持つ天才外科医がいる。二代目姐の勤務先が病院だから、必然的に医者に化けるのが得意になった。ほかのメンバーにしてもそうだ。
「姐さん以外、見破られない自信がある」
サメは天才外科医の声音で宣言すると、速水総合病院のスタッフに扮した部下たちとともに動きだした。これで決める、と。
一馬が新たに応援を呼び、私服刑事や警察官が団体で到着し、物々しい警備態勢になった。これはサメの想定内だ。
案の定、天才外科医は神の手で三途の川を渡りかけたターゲットを救ったらしい。侵入したメンバーから報告が届いた。
「乱暴だけど、これしかない」
サメがウインクを飛ばすと、それが合図だった。病院内に患者に扮して潜んでいたメンバーが、隠れ煙草のふりをしてカーテンに火をつける。
その瞬間、けたたましい火災警報装置が鳴り響いた。同時にサメも俊英の姿で颯爽と院内を進む。
ビリリリリリリリリリリリリッ、と火災警報装置は鳴り続ける。
「火事だーっ」
中年男性の入院患者に扮したメンバーが煽るように叫ぶ。
「きゃーっ」
女性の入院患者に扮したメンバーが煽るように悲鳴を上げる。
「火事だ。火事っ」
「隠れ煙草の峰岸さんだーっ。隠れ煙草の不始末ーっ」
入院患者に扮したメンバーたちの陽動作戦により、病室から多くのパジャマ姿の入院患者が飛びだし、白い廊下をひた走る。さすがというか、先導する看護師や看護助手は冷静で、慌てふためく患者たちを宥めながら進んだ。
平野慎也がいるICUの前では、一馬が右往左往する警察官たちを叱責していた。
「おい、これは絶対に罠だ。落ち着けーっ」
熱血刑事は的確に状況を把握しているが、ほかの刑事や警察官はパニック状態に陥っていた。
「……火事です。病棟が燃えているそうですーっ」
「容疑者を移動させないと黒焦げになります。俺たちも黒焦げになります」
「落ち着け。黒焦げになっても死にゃあしない」
熱血刑事は右往左往する警察官を腕力で押し留めた。
「黒焦げになったら死にますーっ」
今だ、とサメは阿鼻叫喚の嵐の中、白衣の裾を靡かせながら颯爽と現れた。
「君たち、何をしているのかね。見苦しい」
サメは全細胞で風変わりな天才外科医を演じる。収集したデータによれば、こういった時でも俊英は平然としているはずだ。
「……俊英? オペは?」
助手の潮に息を切らしつつ尋ねられ、サメは普段通りの俊英のように答えた。
「僕にその質問は無用だ」
「容疑者が黒焦げになっても助けられるか?」
「火災が発生したらしい。容疑者を移動させる」
「どこに?」
「西病棟なら安全だ」
サメはスマートな足取りでICUに入り、何本もの管が通されたターゲットに近づいた。後は生命維持装置をストップさせるだけ。
だが、潮が静かにICUに飛び込んできた。
「ホームズ、千沙子さんが継母のヒモに拉致された。交渉したいと連絡が入った」
ガバッ、と潮に物凄い勢いで後ろから抱きつかれ、サメの身体がほんの一瞬、竦んだ。確か、急遽、収集したデータによれば、千沙子とは速水探偵事務所の依頼人の名だ。
「ワトソンくん、千沙子さんの命が奪われることはない。待たせたまえ」
ヤバい、とサメは焦ったが、天才外科医の仮面は外さない。
しかし、身体に回された潮の腕の力はますます増した。
「ホームズが交渉してくれ」
どうするか、とサメが次の手を考える間もなかった。
潮はサメの身体を拘束したまま、一馬や警察官たちに向かって大声で叫んだ。
「俊英さんの偽者だ。捕まえてくれーっ」
ズルズルズルズルッ、と潮の物凄い力によってサメはICUから引き摺りだされる。
「ワトソンくん、いったいどうしたんだい?」
姐さん以外に見破られない自信があったのに、俺も歳なのかな、働きすぎだよな、とサメは心の中で溜め息をついた。
「俺は伊達に変人のホームズごっこにつき合っているわけじゃないんだよっ」
俺を騙せると思うな、と潮に真っ赤な顔で力まれてしまう。
可愛いな、と思った瞬間、サメは気づいた。
……あ、わかった、俺のテクに問題があったわけじゃない、と。歳のせいでも疲れすぎのせいでもない、と。ホームズとワトソンはできているんだ、と。そういうことか、と。
ミッションは失敗。
もはや逃げるしかない。
「僕のワトソンくん、可愛いね」
スッ、とサメは全身から力を抜き、潮の両腕からすり抜けた。
唇を奪ってやる。
……と、あまりにも可愛いから思ったが、キスの代わりに拳銃を取りだす。
「駄目だーっ」
潮に飛びかかられる前、一馬に凄まじい勢いで飛びかかられた。
ズギューン、ズギューン、とサメがトリガーを引いたのは二回だ。
一発目は点滴、二発目は壁、目測を誤ってターゲットに鉛玉を撃ち込むことができなかった。
「この野郎っ」
一馬に蹴り飛ばされそうになったが、サメは俊敏な動きで逃げだした。
「誰が逃すかっ」
追えーっ、と一馬の指示に警察官たちがいっせいに追いかけてくる。
誰が捕まってやるか。
ヒットより逃げるのが得意、とサメは変装を解きながら騒然としている患者の団体に紛れ込んだ。そうして、入院患者のふりをして、部下たちによる第二の攻撃を待つ。
イワシが外科部長に扮し、シマアジが古株の看護師に化けて忍んでいるのだ。
信頼する部下たちに託した。
けれども、信頼する部下たちも失敗して逃げてきた。
「ボス、姐さん以外に変装を見破られないと宣言したよな?」
待機組の銀ダラに突っ込まれたが、サメは堂々と胸を張った。
「愛に負けた」
「……愛?」
「愛の前にはどんな力も無力だ」
俺とお前が初めて会ったのは愛の国だ、とサメは銀ダラに何よりも愛が大事なフランスを示唆した。
「どんな愛に負けた?」
「ホームズとワトソンは愛し合っていた。愛の力で見破られた。俺は悪くない」
「ホームズとワトソン? 外科医と助手だな? 男同士だぜ?」
銀ダラは長身の美青年探偵と可愛らしい助手の真の関係に気づいていない。ただ、俊英から銃口を向けられたイワシは納得したように頷いた。
「……おいおいおいおい、我らが二代目のマロンタルトの性別を忘れたな?」
立っているだけで女性を魅了した眞鍋の昇り龍が選んだ相手は、十歳年上の男性内科医だった。サメは清和が幼馴染みに恋をした理由がわかる。
「ホモはあちこちに転がっているか」
ホストにもホモがゴロゴロ、姐さんの勤務先にもホモカップルがいる、ホモはパリの道に落ちている犬のフンより多い、ロンドンもストックホルムもコペンハーゲンもホモだらけ、戦場には俄ホモが湧く、と銀ダラはどこか遠い目で独り言のようにつらつらと続けた。
「愛に性別は関係ないさ」
「ボスが愛について語るなんて、猿が犬について語るようなものだな」
「銀ダラ、エスプリを忘れすぎたな」
「……まぁ、そんなことはどうでもいい。二度目の失敗、どうするんだ?」
「要は極道の天然記念物を納得させりゃいいんだ。例の証拠は集まっているな?」
万事休す、とサメは二度目の失敗に頭を抱えたりはしない。清和やリキ、今では化石と化した昔気質の橘高正宗や安部信一郎に、浅見社長夫妻による悪行の証拠を提示するだけだ。ターゲットとなった平野慎也の真の目的とともに。
予想通り、始末するターゲットが変わった。
すなわち、地獄に叩き送るのは浅見社長夫妻だ。自殺に見せかけて始末したのは言うまでもない。
変人天才外科医と童顔の助手に一杯食わされてからどれくらい経っただろう。
あってほしくないことだが、いずれ、速水俊英の神の手を必要とする時があると予想していた。
馬鹿め。
油断しやがった。
あれほど、アレには油断するなと注意していたのにこの世紀の大馬鹿野郎。
こんな予想は外れりゃいいのにとうとう来やがった。
今だ、とサメは視線で部下に合図を送った。あとは時間との闘いだ。
未だかつてない凄絶な修羅場に、楚々とした日本人形が失神しないことが不思議でならない。改めて腹の据わった姐さんだと感服するぜ。頼むから泣くのは最愛のダーリンが助かってからにしてくれ。
親愛なるホームズ先生、魔女と手を組んでいくらでも知的好奇心をそそる事件をでっちあげてやるから頼むぜ。
今、木村先生とクソ坊ちゃんを助けられるのはホームズ先生しかいないからさ、とサメは颯爽と現れた俊英に心の中で切々と頼んだ。
了
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いつも「龍&Dr.」シリーズを応援していただき、ありがとうございます。本作『龍の覚醒、Dr.の花冠』はバナナ卒業記念になりますので、一緒に氷川に花冠をかぶせていただけたら幸いです。電子書籍オンリーの『電子オリジナル 龍&Dr.特別短編集』は樹生かなめの暴走ではなく、核弾頭の愉快な仲間たちの汗と涙と愚痴の塊……でもなく、愛と情熱の塊ざます。是非、ご覧になってくださいませ。