講談社BOOK倶楽部

スペシャルコメント

2023年7月刊行予定
『シモン・ド・ベルジュはかく語りき』によせて



こんにちは、篠原美季(しのはらみき)です。

気づけば今年も残すところ半年くらいとなり、時の過ぎ行く速さにただただ呆然としてしまうのですが、お星さまの配置的にも世の中の変化は目まぐるしく、なんだかんだ以前と同じ生活はしていられないという方も多いのではないかと思います。
なにも変わっていかない日常には倦みますが、かといって、変わったら変わったで、変わらなかった日々の平穏さが愛おしくなるのだから、人って愚かですよね。……あ、それって、私だけ?
それでも、一年前と確実に違う自分を見つけた時には、心がふわっと華やいで、「よし、がんばろう」と思えるんです。

なーんて、私事はともかく、過去『英国妖異譚』と『欧州妖異譚』の刊行時に書いたSSを拾いあげ、加筆修正してお届けする今回の『シモン・ド・ベルジュはかく語りき』。メインは完全書き下ろしの横浜を舞台にした物語「黄色い館の住人」です。置いてきぼりだったあの方もなんとか口実をこしらえて来ることができたし……というか勝手に来ちゃうし、現在『電子オリジナル セントラファエロ異聞」で活躍している桃里理生も登場し、なかなか豪華な内容になるのではないでしょうか。

ちなみに、今回の物語の舞台となった横浜の歴史的建造物は、実在する「山手133番館」がモデルとなっています。残念ながら通常は非公開ですが、山手を散策すれば、黄色い壁の美しい外観ときれいなお庭を柵越しに見ることができます。

ということで、7月刊『シモン・ド・ベルジュはかく語りき』で久々にお届けできる「妖異譚」の世界を、お馴染みの方も初めての方も、ぜひじっくりまったりご堪能いただけたら幸いです。

篠原美季