ウードは、琵琶(びわ)とルーツを同じくするアラブ文化圏の楽器です。音階が西洋のドレミより多いので、心地の良さと悪さの中間にあるような絶妙な音色を奏で、それが妙に心に響きます。どこか物悲しいような、心の中の「ここ」とはっきり言えない場所をかきたてられるような音色とでも言ったらいいでしょうか。
主人公のセルマは、ウードを奏でながら説話や民話などを歌う語り部(メッダーフ)に扮(ふん)して珈琲館にもぐりこんでいます。女性は本来立ち入れない珈琲館に、セルマが少年になりすまして出入りしていたことから、このお話ははじまります。
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