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ホワイトハート X文庫 | 今月のおすすめ

待望の最終巻! ついにシリーズ完結です!! 我が呼ぶ声を聞いて 幻獣降臨譚 本宮ことは先生が語るキャラクターたちへの思い 『我が呼ぶ声を聞いて 幻獣降臨譚』 本宮ことは/著 池上紗京/イラスト 定価:本体690円(税別) みなさま大変お待たせいたしました! 待ちに待った最終巻がついに刊行です。長らくご愛読いただいてきた「幻獣降臨譚」も、19巻目をもって完結です。本当に感慨深いですね! これまでのストーリーをちょっぴりおさらいしつつ、本宮ことは先生に語っていただいたキャラクターたちへのコメントをご紹介いたします! これまでのあらすじ
 リアラ女神の加護のもと、少女たちは精霊に守られて育つ。しかしそれは月が満ち、大人になる儀式を終えて、精霊の代わりにより強大な「幻獣」を使役できるようになるまでのこと。
 リスタル王国のアリアは14歳。一度は幻獣との契約に失敗し「忌み女(いみめ)」となってしまうが、再契約が叶い巨大な竜を使役することになる。しかしその竜・光焔(こうえん)の力がすさまじいため、制御法を求めてアランダム騎士団に身を寄せる。そこでアリアは、王都にいるシエネスティータ姫がその方法を握っていることを知る。
 だが、騎士団と共におもむいた海賊退治で光焔の力を暴走させ、多大な犠牲者を出してしまうアリア。苦悩した彼女は、自分を好きだという青年と出奔。しかし後悔して王都へ向かい、ようやくシエネスティータ姫に出会ったのだった。
 光焔の力を完全に使えるようになったアリアは、異国へ飛ばされてしまうが、そこで幻獣についての知識をさらに得る。この世と幻獣のあり方に疑問を抱きつつ、シュータン帝国と開戦した故国へ戻ってきたアリアは、敵国の反戦勢力と協力して停戦にこぎ着ける。
 だが、その頃アランダム騎士団は暗黒教団『虚無(きょむ)の果て』に占拠されていた。島の開放に向かったアリアは、教団の最高司祭がディクスであること、そして己こそがこの世の幻獣のあり方を左右する『斗斛(とこく)』であることを知り、もう一人の最高司祭を追って王都へと向かうのだった……。
本宮ことは先生からの貴重なコメントです! なつかしいイラストとともにご紹介
アリア
少女小説の主人公は、お姫様だとか政略結婚の婚約者持ちという立ち位置が非常に多いので、あえてごくごく普通の女の子をメインに、と思って書いたのがアリアです。
読者の方も女性が多いと思うので、女性に好かれる性格にしたいと思ったのですが、これが非常に難しく、七転八倒しました(笑)。
口調がわりと軽いのは、小難しくなりがちな地の文とバランスを取って、少しでも読みやすくしたい、とあがいた表れです。
それでも、まっすぐな性格と、池上さんの描いて下さった強い瞳とで、この話を引っ張っていってくれました。
光焔
幻獣好き獣好き狼好きの読者の方は、当初私が想像した以上に多かったです。
「いつか光焔が人型になってアリアと結ばれるんですよね!?」というご意見ご想像嘆願が山のように。いえ、私も好きですけど(笑)。
話の展開と少女小説という特性上、あえて削ったのですが、本当はもっと幻獣のドラゴン姿での大暴れシーンを書きたかったです。
シェナン
『幻獣降臨譚』というこの話、実は彼が裏の主人公のつもりで書いていました。
テーマの一つに、「少年少女の成長」というのがありまして、ごく普通の少女代表がアリアだとすれば、マイナスからのスタートがシェナン、だという。まあ彼の場合、性格は難ありすぎでしたが、いちおうイケメン王子様なのでスペック自体は高いんですよね。
ただ、あまりにもマイナススタートで、最初は読者の方から蛇蝎(だかつ)のごとく忌み嫌われていたヒーローでもあります。その部分を取り戻すのに、これだけ巻を重ねてしまった、といってもいいかもしれません(汗)。
ライル
みんな大好きお兄ちゃんで俺様キャラ(笑)。しかも美形で強くて実力派。おそらく好感度はナンバー1かと。(ただこれには絶対にイラストの影響大だと思います)
とにかく、「かっこよくかっこよく」と念じながら書きました。
「頭が切れる」という設定も相まって、実は結構書きづらいキャラでもあったりします。
ディクス
いちばん浮き沈みが激しく、なおかつ気の毒なキャラ。おそらくこの話が少年向けレーベルだったら、絶対にこの人が主人公(笑)。男性の読者の方から、もっとも支持されたキャラでもあります。
『幻獣降臨譚』は、男女の比率が非常に偏っているという特殊な世界なので、キャラクターだけは、ライトノベルによく見られるようないわゆる「キャラが立っている」カリカチュアライズされた性格ではなく、現実にもいそうな人物描写を心がけました。そういう意味では、その歪み方や執着や弱さを含めて、彼がもっとも普通の人なのだと思います。
クルサード
子どもの頃は、少し年が上というだけで、ひどく大人に見えたものでしたが、成人した今となっては、少々年を食ったとしても中身はたいして変わらない、ということがしみじみと身に染みたりします。クルサードは、そういう「一見大人に見える人だけれど、中身は結構ガキくさかったりするんだよ」という大人の象徴として書きました。
ユリストル
『幻獣降臨譚』完結に唯一、心残りがあるとすれば、彼の行く末をはっきりと描写できなかったことです。実は、彼については小説完結後のエピソードがいろいろとあるのですが、それはシェナンとの関係であって、『幻獣降臨譚』の主人公たるアリアには関係ないことなので、書いてしまうと完全に蛇足になってしまうため、削らざるを得ませんでした。私の構成力不足です。すみません。
ランドール
いちばんのお気に入り。しかし、だいたいにおいて、作家に気に入られたキャラクターというのは、えこひいきされるか逆にとことんひどい目にあう傾向にあるんですよね。そして私の場合は、もちろん後者です。はい。(というか、『幻獣〜』の中で問題なくいい思いをしてるキャラっているのか?)
だいたいにおいて、貧乏くじを引く立場のキャラって、好きなんです。