講談社BOOK倶楽部

ホワイトハート X文庫 | 今月のおすすめ

新シリーズスタート記念華藤えれな先生のスペシャルインタビュー!

クリスマスワルツ 伯爵家の情人

華藤えれな/著 葛西リカコ/イラスト 定価:本体630円(税別)

ホワイトハートのイチオシ特集「今月のおすすめ」に初登場の華藤えれな先生に、詳しいプロフィールから、最新作の裏話までたっぷりお聞きしました!

その時によって違うのですが、大学時代からずっと好きな作家さんは、『クリスマスワルツ』の作中にも出したドストエフスキーです。あとカレル・チャペック、細谷亮太先生のご著作もよく拝読しております。好きな本はガルシア・マルケスの『愛その他の悪霊について」。それからウイルスや細菌の本を読むのが好きなので、時折、発作的にかき集めて乱読しています。
1996年からずっとスペインの闘牛にはまっています。時々スペインや南フランスを放浪しながら闘牛場に通っています。放浪といえば、東欧をローカルバスで彷徨(さまよ)うのも好きです。
旅行の移動中です。ヨーロッパをローカルバスや電車で移動するのが好きなんですが、ぼんやり外の風景を眺めている時間が一番リラックスします。
「幸福」
憧れているというのとは少し違いますが、ソチ五輪前ということもあり、今現在、フィギュアスケートの羽生結弦選手の一生懸命な演技を見ていると、自分もがんばろうという気持ちになります。
好きな映画はいろいろありますが、ヨーロッパの繊細な風景や日常が叙情的に描かれた映画が好きです。音楽は基本はクラシックです。ロシア音楽がとても好きなのですが、作中で使用したサン・サーンスのドラマチックな音楽も好きです。それからアルゼンチンタンゴの巨匠ピアソラや、キューバのレクオナも。でもなにより闘牛で使われるパソドブレを耳にすると、血が熱く滾ります。
高校二年生のとき「国語表現」という授業で「小説を書く」という課題があり、そのとき、小説を書く楽しさや喜びと恥ずかしさを知りました。
この時代にしたのは、小説のデビュー前から担当している評論のお仕事で、ファシズムに抵抗した「白バラ」やユダヤ人の少年少女の手記、チェコの収容所、ロシア革命の本等々、この時代の人々の手記や活動に触れ、研究する機会が多かったことも関係しています。その後、欧州に行き、実際に本に出てきた場所を訪ねるのが好きなのですが、歩いていると、歴史の重みを背負った土地が持つ独特のオーラにドーンと圧倒されることがあって……。そのとき、どうしてもここを書きたいという、いてもたってもいられない衝動を感じることがあります。今回の話もそんなふうにパリやベルリン、東欧を歩いているときに、ふっと脳内に湧いてきたものでした。
外国語……、基本的には苦手なのですが、英文科を卒業したことやウィーンの語学学校でドイツ語を勉強したこと、スペインで闘牛士の家にホームステイして必然的にスペイン語を覚えるはめになった経験など、外国語を学ぶ機会がいろいろとありました。自分のなかで一番すらっと出てくるのはスペイン語なのですが、やはり日本語と違って語彙が少ない分、伝えなければいけないことを端的に言葉にするしかなく、人間関係のコミュニケーションの取り方が日本語とは全然違うと実感することがあります。もちろん相手の方の国民性や性格によっても様々ななのですが。
好きな言葉は、ポルテーニョと呼ばれるブエノスアイレスの人間が話している独特の癖のあるスペイン語が好きです。スペイン語は、メキシコ訛りのちょっとかわいげのある発音やコロンビア訛りのやわらかな発音も好きです。今回のお話に使ったドイツ語では、ポルテーニョ同様に、ウィーンの人間が使っているウィーン訛りのヴィエナリッシュというドイツ語が好きです。けだるくて色っぽくて。その対極にあるのがイザークの使っている北ドイツ系のドイツ語だと思うのですが、歯切れがいいので、旅行中に何か買うとき、数字がわかりやすくて、実は一番聞き取りやすいんじゃないかなと思うことがあります。
清春とイザーク以外、全員、変人のような気がしますが……どうでしょうか。兄弟のテーマとしては、名前の通り、清春(ルカ)は春にむかって生きていく人生、兄の直冬は、冬にむかっていく人生を歩むキャラになっています。個人的に気に入っているのは、ロジオンとコンラートです。とくにコンラートをちらちら登場させるのがとても楽しかったです。
今回、ありがたくもご一緒させて頂き、本当に感謝しています。作品の舞台にした古い時代をのぞいているような、セピア映画のような美しい雰囲気の表紙や、時代の重みを感じるような、それでいて繊細なモノクロのイラストの一枚一枚のアングルや空気感に感動しました。個人的にはロシア正教の美貌の修道士を先生の絵で拝見することができて大変幸せです。
今回、いきなりハードなシーンから始まり、中身もほのくらいセピア色のような空気感を目指しましたが、ラストシーンでふわっと春の陽が感じられるような、そんな気持ちになって頂けたらとても嬉しいです。どん底にいた主人公が幸せになっていこうとする、わりとよくある世界名作劇場的な流れの話だと思います。少しでも別世界を楽しんで頂けたらうれしいです。どうぞよろしくお願いします。
華藤先生の独特の世界観が伝わる素敵なインタビューでしたね! 最新刊『クリスマスワルツ 伯爵家の情人』をどうぞご覧ください。