
古都妖異譚 桃下の魍魎 ~ザ ホウンテッド ツリー~
篠原美季/著 蓮川 愛/イラスト
「英国妖異譚」「欧州妖異譚」に続く書き下ろし新シリーズの第2弾! 止まっていた時間が動き出す。 心の奥底に隠していた秘密もまた、怪異とともに顔を出すーー。世界中がパンデミックの恐怖に見舞われ、あらゆることが停止したのち、ようやく活気を取り戻してきた欧州。ロンドンの骨董店「アルカ」の店主ユウリ・フォーダムは、この店の雇われ管理人であるミッチェル・バーロウが抱えるトラブルに巻き込まれることになってしまった! そこには、ある屋敷の売り立てで出た骨董品が関わっているようだが……。蓮川 愛先生の描き下ろしカラー口絵付き。
著者からのコメント
■篠原美季先生より
こんにちは、というか、お久しぶりの篠原美季(しのはらみき)です。
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今回は、「古都妖異譚」シリーズについて、熱く語らせていただきます。これを書いているのは7月で暑いから、あまり熱くはなりたくないんですが、やっぱり自然と熱くなりますよね。大好きだから、彼らのことが。ということで。以下、サブタイトルのみを挙げながら簡単な感想を書かせていただきます。
◆まず『玉手箱 ~シール オブ ザ ゴッデス~』は、実際に船の転覆事故で失われてしまった日本の国宝級の美術品をテーマに、シモンのロンドン移住など新しい環境下でのユウリたちの生活を描いています。
新シリーズに突入、しかもX文庫を離れての船出ということで、国会図書館に出向くなど、かなり気合を入れてあれこれ調べたのをよく覚えています。
◆次に『桃下の魍魎 ~ザ ホウンテッド ツリー~』ですが、これは、毎年実家の庭に咲く桃の花を見ていてなにか書きたくなって考えた物語です。
不思議なことに、これを刊行した翌年だかに、ついに桃の木は枯れてなくなってしまったんですよね。一つの時代の終焉を予感させるような出来事だったかもしれません。
◆3作目の『雷神の落とし物 ~サンダー ドロップ~』は、なかなかテーマが見つからずに近所の図書館にこもっていた時に、各地の神話などを読んでいて思いついた物語です。
私は「遠雷」が大好きで、なんだかんだ、ユウリの感性って私の感性なんだなあと思います。だから、私にとっては唯一無二だし、当たり前ですが、誰にも、真似できないんだろうなって。
◆そして、最新刊となる『アラバスターの鐘』。これは、私が作家人生で何度かやっていることですが、ある言葉に惹かれ、それを生かした物語を作るというところから出発した作品です。
とにかく「アラバスターの鐘」というタイトルで書きたかった。そんな中、ミッチェルとアシュレイの関係性が垣間見えてよかったなと思います。
今はもう夢のまた夢のような話になってしまいましたが、かつてはミッチェルとアシュレイをメインにした稀覯󠄁本(きこうぼん)ミステリーを刊行しようという企画もあって、あの時、無理をしてでもやっておけばよかったなと、若干後悔しています。まあ、体力的・精神的に無理だったから仕方ないんですけど、物事にはタイミングってありますからねえ。残念。
そんなこんなで、改めて、私の大好きな世界観がギュッと詰まったこのシリーズを、ご堪能いただけたら嬉しいです。
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