今回の結末は、スタート当初から思い描いていたものになりましたか?
犬飼用意していたルートがいくつかあったので、「思い描いていたもの」とは言い難いところもありますが、おおむね予定通りです。いくつか存在したルートの先に、楓雅が新教祖になるというものがありまして、もしそのルートを進んでいたら今とはだいぶ違っていたかもしれません。
シリーズ11冊の中で、犬飼先生ご自身が思い入れのあるシーンというと……?
犬飼9作目『学園の薔薇と選ばれし者』の教祖選です。9作目の大半は教祖選にページを割いていて、同じ場所で選挙演説をしているシーンが続きます。BL小説としてはあまり求められていないというか、つまらないシーンになりかねないので、とても慎重に書きました。多くの読者様から「教祖選が面白かった」と言っていただけて、ほっと胸を撫で下ろした次第です。
筆が乗ったシーン、逆になかなか進まなかったシーンなどあればぜひ教えてください。
犬飼思い入れがあるシーンと同様に、筆が乗ったのも教祖選です。あと、青一と葵が書きやすくて好きなので、彼らが出てくるシーンは筆が乗っていたと思います。逆になかなか進まないのは常盤と薔のシーンで、やはり「攻めを恰好よく」「萌えるように」など、読んでくださる方の御期待に添うものを書かなければならない使命感があるので、時間をかけて言葉を選んで書いていることが多いです。一方で、SSでは「攻めを恰好よく」という課題を放棄していることが多く、いつもだいたい乗りよく書いています。
考えていたけれど、実際には書かなかったマル秘エピソードがあれば教えてください。
犬飼たくさんあります。元々は前世編も書くつもりでいたので、前世に楓雅や紫苑も絡ませていました。前世編はバッドエンドのうえに、濡れ場は常盤×椿になってしまい、常盤×薔を推してくださっている方には喜ばれないと判断して、途中から書かないと決めて路線変更しました。かかわるキャラクターを最小限に抑え、今の状態になりました。他にも本編で書くつもりだった脇キャラのエピソードが色々あるので、いつか形にできたらいいなと思っています。
『ブライト・プリズン』を執筆するにあたり、犬飼先生が大切にされていたこと、心がけていたことはなんでしょうか?
犬飼4作目『学園を追われた徒花』までは、「自分の好きなものを詰め込んで書こう」と思っていたのですが、4作目を出したあとの読者様の反応を受け、自分は間違っていたと気づいて反省しました。5作目『学園の薔薇は蜜に濡れる』からは、「求められているものと自分の好きなもののバランスを取って書こう」と心がけるようになりました。書きたいものを何もかも詰め込んだり脇道に逸れたりせず、取捨選択して本筋をメインに、脇キャラのエピソードは最小限に抑えて書くようにしました。そういった経緯があったので、常盤と薔の絡みもなく動きも少ない教祖選にページを割くことが怖かったのですが、慎重に書いた結果おおむね御好評をいただき、自分の成長を感じられて嬉しかったです。
最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。
犬飼『ブライト・プリズン』は、私が好きなものを好きなだけ詰め込んで書いたところから始まり、読者様の御意見や御感想に支えられたり打ちのめされたりしながら、11冊の物語として完成しました。ここまで育てていただき、本当にありがとうございました。この先を書く気は十分にあるのですが、一旦ここで一区切りです。最後まで、そしてこれからも、どうか末長くお付き合いください。
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著者からみなさまへ
こんにちは、犬飼(いぬかい)ののです。昨年に続いて今年も朗読劇を上演していただき、御声がついたことで自分の中で新たな盛り上がりがありました。応援してくださる皆様に心より御礼申し上げます。新刊『ブライト・プリズン 学園の薔薇と純潔の誓い』はシリーズ十一作目です。ここまで出た段階で第一巻から大人買いしていただくと、待ち時間ゼロでスッキリ読んでいただけるかと思います。今が読み時、おすすめです。ずっと応援してくださっている方にも新規の方にも、お楽しみいただけますように。