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『VIP 宿命』

高岡ミズミ/著 沖 麻実也/イラスト定価:本体750円(税別)

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STORY

『VIP 宿命』定価:本体750円(税別)

おまえのいない人生は考えられない。

出会ってからの十年の記憶を失った久遠(くどう)と、木島組の別荘で激しい一夜を過ごした和孝(かずたか)は、すべてが元どおりではないものの、変わらぬ久遠の姿に安堵する。一方、白朗(パイラン)と共にいるはずの田丸(たまる)は、秘密裏に帰国を果たしていた。久遠の力が増すのを恐れた不動清和会会長の三島(みしま)が、密かに彼を呼び戻していたのだ。警戒する和孝の前に堂々と姿をみせた田丸だったが……。

著者からみなさまへ

こんにちは。今年最初の新刊は『VIP 宿命』になりました! 毎回緊張しきりなのですが、今回もとても緊張しています。前作『VIP 接吻』で関係が一歩進んだふたり、今作で登場人物が出揃いましたので、いよいよ正念場を迎えます。愛(と欲)を貫こうとするふたりをどうか見守ってくださいませ。まずは宿命、沖先生の素敵なイラストとともに少しでも愉しんでいただけますととても嬉しいです。

初版限定特典

特別番外編「離れがたい夜」より

初版限定 書き下ろしSS
特別番外編「離れがたい夜」より

 部屋の隅に重ねた段ボール箱を前にして、缶ビールで乾杯する。久遠の手助けもあってとりあえず普段必要なもの以外は概ね片づいたので、ずいぶん気が楽になった。
「それで、久遠さんの都合は?」

…続きは初版限定特典で☆

special story

書き下ろしSS

『VIP 宿命』特別番外編
「懐かしい場所」
高岡ミズミ


 突然思い出話になったのは、村方の一言がきっかけだった。
「いまでも不思議なんですけど、宮原さんはどうして僕をBMのサブマネージャーにしてくれたんですか?」

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 最後の客が帰っていくや否や、カウンター席に腰掛けた宮原を中心にみなで盛り上がるのはめずらしいことではない。賄いで一杯やりながら、他愛のない雑談から『月の雫』に関する計画まで、あらゆることを四人で話すのだ。
 そんななか、月の雫について相談していた際に、村方の問いが飛び出した。
「ああ、そのこと?」
 BMは、オーナーだった宮原はもとより村方にとっても津守にとっても懐かしい場所だ。自分に至っては青春、いや、当時は人生そのものだったと言ってもいい。
「それは、俺も聞きたいです。宮原さんの採用基準」
 和孝も村方同様、初めからマネージャーとして玄関ホールに立つために、宮原から必要な訓練を受けた。
 BMは特別な場所だ。
 いわゆるVIP専用の完全会員制クラブで、かつては大きな商談や重要な密約がBMの一室で行われたと聞いている。それだけに審査は厳しく、会員に名を連ねること自体がステイタスとされていた。
「採用基準なんて、そんなたいそうなものじゃなかったけど」
 そう前置きした宮原は、こちらを見てきたあと、質問した村方へその目を向けた。
「強いていうなら外見と、あとは勘かな。この子になら任せられるって」
 宮原がそう言うと、
「ほんとですか!」
 嬉しそうに村方が瞳を輝かせる。
「あ……でも僕、足運びがなかなかマスターできなかったのに」
「そんなことより大事な魅力と資質が村方くんにはあったんだ」
 感激したのだろう、村方の睫毛が湿り気を帯びる。
 村方の気持ちは和孝にもよくわかった。和孝自身、この子にならと宮原に言ってもらえたことは嬉しいし、誇らしくもある。
 気の置けない三人の仲間と、グラスを傾けながら、懐かしい頃に思いを馳せた。
 まだ十代で、宮原から教育を受けていた頃に。


 鏡の前に立った和孝は、頰を強張らせている自身を見て、小さくため息をつく。表情の訓練を始めて一週間、どうしてもうまくできない自分にいいかげん嫌気が差していた。
 そもそも洗練された笑い方なんてできるはずがない。物心ついてからいままで、心から笑ったことなど一度もないのだから。
「……すみません」
 背後に立つ宮原に謝る。
 自分には接客業など向いていない。落ち込む和孝に、宮原は優しくかぶりを振ると、励ますように手を肩にのせた。
「大丈夫。すぐに慣れるから」
 慰められるとなおさら情けなくなってくる。相手の警戒心を解くほほ笑み、かといって笑いすぎてもいけない。媚びを売る必要はなく、あくまでホストに徹する。たったそれだけのことが自分には難しいのだ。
 きっと内心では宮原も失望しているだろう。それがなによりつらく、恥ずかしかった。
 思わず目を伏せると、
「見て」
 まっすぐ鏡を見るよう言われる。
 躊躇いつつもふたたび視線を上げた和孝は、鏡の中の仏頂面と対面した。見慣れた、不機嫌な顔だ。
 なにもかもが気に入らなかった。不満だらけで、他人にほほ笑みかけたことがないのだから、どうすれば宮原の望む表情が作れるのかわからない。
「柚木くんは姿勢がいいし、立ち姿や歩く姿がとても綺麗なんだよね。こっちのほうが本来難しいんだけど」
 さらに宮原の言葉は続く。
「なによりオーラがある。こればかりは訓練でどうにかなることじゃないから、柚木くんはご両親と自分を誇っていいよ」
 こういう褒め方をされるのは初めてで、頰が熱くなる。照れくさいというより、存在価値を認められたような気がしたのだ。
「柚木くんの大きな武器。それがBMの武器にもなる。笑い方ならどうにでもなるから安心して。経験が柚木くんを大人にするよ。中身も見た目も、ね」
 この言葉は大きな支えになった。
 以降、迷いを捨てて積極的に勉強に取り組んだ。マネージャーとしての所作、対応、知識、マナー。ネイティブ並みに流暢とは言えないまでも英語も話せるようになったし、やるべきこと、やってはいけないことを取捨選択する重要性も学んだ。
 いま自分がこうしていられるのは、多分に宮原のおかげだと言ってもいい。
 必要としてくれるひとがいる。そのひとの期待に応えたい。それが自身の考え方、生き方にも繫がった。 
「なんだか不思議な感じがする」
 ふと、そう呟いたのは津守だ。
「じつは俺、最初にBMに連れていかれたとき、なんだここはって啞然としたんです。やたら厳かな建物に、格式高そうな雰囲気、映画から出てきたようなスタッフ。変な話、宮原さんがオーナーじゃなかったら、胡散くさいクラブだって決めつけてました」
 正直な感想なのだろう。実際、常識では計り知れない空間だったと、なくなったいまだからこそ思う。
「同感」
 宮原自身もそう言い、グラスを掲げた。そして、
「ふたりとも、本当に立派な大人になったね。傍で見てきた者として嬉しいよ」
 思いもよらなかった一言が宮原から投げかけられる。
「ーー宮原さん」
 胸がいっぱいになって、なにも返事ができない。数々の思い出が次々と脳裏によみがえり、熱いものがこみ上げてきた。
 懸命に我慢していた和孝だが、隣で村方が洟をすすり始める。
「あーあー」
 笑いながら津守が差し出した紙ナプキンで、顔をごしごしと拭く村方の姿にあえて和孝も笑うと、あとは心地よい場にどっぷりと浸った。立派かどうかはさておき、ここにみなと一緒にいられる、それこそが自分が大人になれた証のような気がしていた。

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