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電子オリジナル『白衣を脱いだその夜に』

春原いずみ/著

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STORY

電子オリジナル『白衣を脱いだその夜に』

麻酔科医×外科医の危険なラブ・アフェア!

谷澤葵は、美しい顔だちとおとなしい性格をしているが、手術の腕は折り紙つきの外科医師だ。医局でも人一倍こき使われながらも、黙々とオペをこなしている毎日だったが…。ある日、長く同居していた実兄に結婚相手が現れ、葵の生活は一変する。さらに、兄の花嫁になる女性の弟―麻酔科医の志築公に、初対面から振り回され、心も身体も制圧されて、あっという間に抱かれてしまい!? 麻酔科医×外科医の危険なラブ・アフェア!。

著者からみなさまへ

こんにちは、春原(すのはら)いずみです。お久しぶりの新作です! タイトル通り『夜』中心に思い切り振ってみました! 変わり者でドSの麻酔科医と気弱で存在感ゼロなのに××(ここ大事なので伏せ字w。想像して楽しんで下さい!)な外科医の『夜』なお話です。これをお読みになっていただくと、秋にお楽しみが待っていますので、ぜひご一読を!「電子書籍は苦手…」とおっしゃる方もぜひぜひデビューしてみてください!

special story

書き下ろしSS

『白衣を脱いだその夜に』特別番外編
「夜に乾杯」
春原いずみ

『メシを食いに行く』
 必要最低限の命令…彼は違うと言いそうだが、あれは絶対に命令だと、谷澤葵は思っている。基本的に、彼、志築公の葵に対する言葉は、ほとんどが命令である。二人の間に上下関係は全くないのだが、彼との会話は、なぜか上から目線が基本だ。
 とにかく、手術部の更衣室で命令され、葵はおとなしく、スタッフ用の玄関で待っていた。ほどなく、私服に着替えた志築が降りてくる。彼は、葵の姿を見て、なぜかふうっと深いため息をつく。
「何ですか?」
「いや、あまりに想像通りだったんで、自分の予知能力の素晴らしさに酔っていたところだ」
 訳のわからないセリフを吐いて、志築は軽く葵の腕を取った。
 そして、彼はいつも葵の腕を取って『連行』する。そんなことをされなくても、ちゃんとついていくのに、なぜか普通に歩かせてくれない。
 もうすっかり慣れてしまったので、葵はおとなしく連行される。彼には抗っても無駄なのだ。志築は、葵をタクシー乗り場に連れていき、客待ちしていたタクシーに放り込んだ。
「中央通りの『ル・ヴァン』まで」
 “あれ…?”
 どっかで聞いた店の名前だ。しかし、一切の説明なく、タクシーに乗り込んだ志築は、腕を組んで、目を閉じてしまったのだった。

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『ル・ヴァン』は、カジュアルフレンチの店だった。
「相変わらず、可愛いお店ですね…」
 かなり広い店内は、アイボリーホワイトとくすんだピンクで統一されている。生花もたっぷり飾られていて、どう見ても女子向きの店だ。実際、そっと店内を見回すと、席に着いているのは、女性グループやカップルがほとんどである。
「見た目は何だが、味は確かだからな」
 この店に来たのは、二回目だ。一度目は、葵の兄の翠と志築の姉の愛を交えた、顔合わせの席だった。あの時は、仕事を終えて、バタバタと駆け込む形になってしまったし、何より、兄の結婚相手と会うというので緊張していて、何を食べたかなんて全然覚えていない。
…ズッキーニのチーズ衣焼きサラダ バルサミコ風味と鰯のマリネ レモンとコリアンダーの香り ガーリックチップ」
 志築はすらすらとオーダーする。
「それに、ワイン…ピエール ローラン ヴィニュロン ブルゴーニュ オート コート ド ニュイ ブラン」
「早口言葉だ…」
「何か、言ったか?」
 志築にじろりと睨まれて、葵はふるふると首を横に振った。
「あと、焦がしバターとカリフラワーのムースもいいな」
「かしこまりました」
 ハンサムなギャルソンがメニューを受け取って、去って行った。
…どうして、ここで食事を?」
 ここのスタッフはハンサムばかりだなぁと思いながら、葵は志築に尋ねた。
「たまには外食もいいだろ。おまえが料理できない以上、俺が作るしかない。たまには、俺だって、人の作ったメシを食いたい」
「はぁ…」
 その通りである。
 葵はまったく家事ができない。さすがに、洗濯機を回すことと掃除機をかけることくらいはできるが、料理に関しては『無理』としか言いようがない。センスがないのである。
「すみません…」
「別に謝ることじゃない」
 志築は肩をすくめた。
「おまえに家事労働を求めるつもりはない。人は適材適所だ。おまえの場合、仕事とセックスに特化している」
…」
 何を言い出してくれちゃってるのだ、この人は。
「手術室のおまえは間違いなく天才クラスだ。俺が見た中でもトップクラスの天才だよ」
…ありがとうございます」
 この人に褒められても、ちっとも嬉しくないのはなぜだろう。ただ、背中がさわさわするだけだ。彼の強すぎる視線から逃げるように、ふと目を泳がせて、葵はあ…と小さく声を上げた。
「どうした?」
 耳ざとい人だ。葵はテーブルの上で、そっと窓際のテーブルを指さした。
「あそこにいるの…小泉先生じゃないですか?」
「え?」
 志築が軽く目を細めて、葵が指さす方を見る。窓際のテーブル席に、恐ろしく目立つ二人連れが座っていた。人形のように美しく整った顔立ちの美青年とすらっとした姿のいいハンサムな男性だ。
「小泉と…芳賀先生だ」
 二人の同僚である心臓外科医たちだ。共に、手術部きっての実力者である。
「ふぅん…仲よかったんだな」
 二人は仕事中には見せないような穏やかな表情で、食事を楽しんでいるようだ。
…葵」
 彼のやや不穏な声に視線を戻すと、ひどく不機嫌な顔をしている。いや、彼の場合、機嫌がいいことの方が少ないのだが。いろいろと鋭すぎる人なので、わからなくてもいいことまでわかってしまって、不機嫌になるらしい。葵のように、少しぼんやり生きていた方が楽なのにと思ってしまうこともある。
「はい…」
「俺と一緒にいる時に、俺以外を見るんじゃない」
「はいぃ?」
 たまにこの人のことがわからなくなる。
 彼にとって、自分はいったいどういう位置づけなのだろう。恋人というには、甘い雰囲気など皆無だし、セックスフレンドというには、世話をされすぎている気がする。
 きょとんとして見つめると、彼はふいと視線をそらした。
…今度、服を買いに行くからな」
 ぼそりと言われた。
「服…ですか?」
 何を言っているのか。
「本当は『ラ・リューヌ』あたりに行きたいんだよ、俺は」
『ラ・リューヌ』は、この店と同じくレストラン業界の風雲児である賀来玲二経営のフレンチレストランだが、カジュアルではなく、ミシュランの星持ちの一流フレンチである。
「だが、おまえの手持ちのダサい私服では、とてもじゃないが、あそこには連れて行けない」
 葵は自分の着ている服を見下ろした。薄手のハイネックセーターに、少し厚手のチェックシャツを羽織り、ボトムスはちょっとくたびれたチノパンだ。確かにダサい。
「そうですね…」
 志築はというと、きちんとプレスの効いたシャツに、仕立てのよいジャケット。センタープレスのパンツというオーソドックスで、品のいいファッションである。
 ちらっとまた盗み見てしまった小泉と芳賀も、すっきりとした上品なカジュアルシックだ。うん、確かに葵だけが、とんでもなくダサい。彼が葵の私服を見てため息をついたのは、これか。
「葵」
「いてっ」
 テーブルの下で、足を蹴られた。
…帰ったら、お仕置きだからな」
「え」
「また、俺以外を見たな」
 彼がお仕置きと言ったら、ベッドでのお仕置きに決まっている。たぶん一回では許してもらえない。葵が気を失うまでたっぷりと可愛がられるフルコースだ。
  “セックスに特化している…って、こういうこと…?”
 なぜか、志築は葵が気に入っているらしい。特に…セックスにおける葵の身体と反応が。
「お待たせいたしました」
 すうっと音もなく現れたギャルソンに、葵は悲鳴を上げそうになった。
「お料理とワインをお持ちしました」
 銀のワゴンの上には、チーズのいい匂いのするたっぷりとしたサラダと、パプリカの赤とコリアンダーのグリーン、レモンの黄色も鮮やかな鰯のマリネ、脚付きのグラスにこんもりと盛られた白いムース。そして、二つのワイングラスと白地にラフなタッチの風景画が可愛らしいエチケットのワイン。
「美味しそう…」
 ギャルソンが二つの大皿をサーブし、グラスを置いて、ワインを注いでくれる。
「ごゆっくり」
 ギャルソンが静かに去り、志築がまずグラスを取った。
「たっぷり食べて、飲んでおけよ」
「はい…」
 共にグラスを取り、軽く触れ合わせる。
「今夜に」
 志築が言った。
…今夜に」
 葵も応える。
 今夜もあなたと過ごす夜。熱い夜が待っている。   

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