エドモンド・オスカーは、かなり不機嫌だった。 本人、それほど不機嫌さを顔に出しているつもりはなかったが、はたから見ていて明らかにそれとわかるほど不機嫌だったので、談話室に集まっている仲間の誰もが近づこうとせず、遠巻きにしている。 「おい、何があったんだよ、リッキー」 仲間内でも、とりわけオスカーに近い存在と思われているリッキー・チャムは、友人の一人に小突かれて問われるが、彼だって、エドモンド・オスカーの不機嫌の理由などわかるわけがない。 ただ、普段、どちらかといえば感情を荒らげることのない彼があれほど不機嫌になるとしたら、その原因に心当たりがなくもないのだが……。 (……やっぱり、あれかな?) もちろん、詳しい事情はわからないが、リッキー・チャムが知る限り、オスカーが感情を荒らげる原因となる要素は、現在のところ、たった一つだ。 (また、フォーダムのことで、誰かともめたのか) 最近、友人が入れ込んでいる上級生は、なかなか厄介な人物のようで、彼とかかわるようになってから、友人の態度は浮き沈みが激しくなった。 もちろん、激しくなったといっても、元がクールで、アウトサイダーを気取っていた友人であれば、程度はたかが知れたもの。 むしろ、そういう感情を伴うかかわりは、決してマイナス要因でないはずだが、どうせかかわるなら、もっと身近な人間にすればよかったのだ。それを、なにを血迷って、あれほど守りの固い相手を選んでしまったのか。 もっとも、その上級生自身の守りが固いわけではなく、彼の周囲に、守護者を気取るつわものどもがそろっていて、常に目を光らせているというだけの話なのだが、その面子(メンツ)がそうそうたるものであるだけに、近づくのは容易ではなく、そこをあえて突っ込んでいこうとするのは、無謀としか言いようのない行為だった。 (まあ、本人も、選ぼうと思って選んだわけじゃないだろうけど) 多少の同情を込めて思い、リッキーが小さくため息をついた時だ。 談話室に、新たに生徒が入ってきた。