その頃、湖に続く雑木林の一角に、はちみつ酒の壺(つぼ)を抱えた少年が、とりわけ太い木の枝をまたぐ形で座り込み、中を覗(のぞ)き込んでいる姿があった。 あちこちを向いて逆立つ黒い剛毛。 そばかすだらけの顔。 はねた髪の間からのぞくやけに尖(とが)った耳が、彼を人間以外の生き物だと教えている。 少年の名前は、ピンチ。