(りんごを背負ったハリネズミ……) そのことが頭から離れなくなってしまったセイヤーズは、モヤモヤしたものを抱えこんだまま目的地にたどり着く。 だが、せっかく一人でのんびりしようと思っていたのに、これでは意味がない。 そこで、意識して気分を切り替え、彼は人のいない東屋に座ると、サンドウィッチの袋を破って食べながら、早々に雑誌のページを開いた。 論理的な記事を読めば、うやむやなざれ言など吹き飛んでしまうと踏んだのだ。 そして、それは成功した。 程なくして、彼が興味を覚えている「万能細胞」についての詳細な記事に没頭し、彼は食べることも忘れて読みふける。 時おり、思い出したようにサンドウィッチに手を伸ばして口にするが、食べていることを意識してはいなかった。