自分の精神状態に一抹の不安を覚えつつ歩いていると、学生会館の前でヴィクトリア寮(ハウス)の筆頭代表であるシモン・ド・ベルジュと、その友人であるユウリ・フォーダムに出くわした。 「やあ、オニール」 「ああ。ユウリにベルジュか」 その気の抜けた返事に、ユウリが心配そうな顔を向けてくる。 「どうしたの、オニール。何か元気がないみたいだけど」 「いや。そんなことはないさ。……それより、そっちこそ、相変わらず、いつ見ても一緒にいるんだな」 とっさに怨(うら)めしげな口調になってしまったようで、困ったように一度シモンを見あげたユウリが、様子を窺(うかが)うように申し出る。 「…………これからシモンとカフェテリアでお茶をするつもりだけど、もし時間があるようなら、オニールも一緒にどう?」 「え、いいのか?」 「もちろん」 快諾するユウリの横で、シモンは優雅に肩をすくめただけだった。